子どもの素直な感性、受け止めを大切に「やまなし」
箕 浦 健 司

 書き込みノートによる一人読みの学習を経て、五月、十二月それぞれの幻灯について、想像したことを出し合った。仲間と思いを交流し、さらに想像の世界が深まっていった。そして、2つの幻灯を対比させ、それぞれのイメージを出させた後に、子どもの初発の感想の1つでもあった「なぜ、十二月にしか登場しないやまなしが、題名になっているのか」という課題に取り組むこととした。

 2つの幻灯の対比のためのワークシートを用意した。項目は、@季節、A時間、B谷川の中に登場するもの、C上からやってきたものとした。ワークシートに書き込んだ後、Cの「かわせみ」と「やまなし」を対比させて、課題について考えさせた。
「かわせみは、かににとってこわいものだけれど、やまなしはかににとっておいしい、楽しみなものというよいイメージなので、やまなしという題名にしたと思う。」
 このような意見が多かった。
「かわせみ」と「やまなし」を比べさせたため、子どもの想像の幅を狭めてしまい、「かわせみ=悪、やまなし=善」という短絡的な考えを生み出すことになってしまったのである。

 この反省から、相学級では、ワークシートに、@〜Cに加えて、Dそれぞれの幻灯のイメージを書かせた。
 2つの幻灯のイメージを出し合い、対比させた後、なぜ、賢治は「やまなし」を題名にしたのかを話し合った。
「五月には谷川で色々なことが起きたが、やまなしのおかげで、かにも谷川も穏やかになったから。」
「ハプニングがいっぱいあっても、たまにはいいことがある、ということが言いたかったのかな?」
「やまなしを追いながら、かにはうきうきしていたし、月光の虹も作ってくれたから。」
「ハッピーエンドにするという、大切な役割だったから。」
「やまなしは、かにの一番の喜びだから。」

 子どもたちは、それぞれの思いを自分の言葉で書き、発表した。自学級での実践と比べて、1つ言えることは、条件を限定せず、子どもに委ねたことにより、多様な意見が出てきた、ということである。子どもの素直な読み、感性を尊重するということを、これからも大事にしていこうと思う。子どもたちは、一人読みでため込んだイメージを、しっかりと持っていた。それを自由に、自分の言葉で語らせることで、様々な意見が出て、話し合いが活発になっていったのである。
(長浜市立長浜南小)