全校音読指導(2)
吉 永 幸 司

1.全校音読指導・・・その後
 全校で音読をするということの効果は、詩「落葉松」(北原白秋)を共有することであった。少なくとも、作者や詩のリズム、繰り返しなどは知ることができた。この詩の選択が良かったかどうか、意味を説明することなく終わったことで良かったかどうかという議論は残るが、それぞれに心のどこかに残っていればいいことであると割り切った。しかし、どのくらい習得をしたか、暗唱はできているのかとういう興味もあり、指導の翌日、3年から5年に記憶した連を書かせた。その結果、様々な実態が明らかになった。(このことは学級担任には知らせておかなかった)

2.全校音読指導で得たこと
(1) 指示をすると習得率が高くなる
 全校音読指導をした放課後、玄関前で覚えたところを音読させた。十数人であり、出会った子なので音読をさせた子への特別な意図はなかった。
 その子たちは翌日は、指示を受けた連は確実に覚えていた。その中には、日頃の授業で、習得がよくないと言う子もあったことから考えると、学習の範囲や到達目標を分かりやすく、具体的に指示することが大切であるという当たり前のことを学んだ。

(2) 課題を持つと習得は確実になる
 詩の全体、つまり8連を暗唱した子がいた。理由は、「プリントをもらって休み時間に覚えた」「先生が覚えましょうと言われたので、その時に覚えようと、1年生が読んでいるとき一生懸命覚えた」であった。つまり、指示や課題を自分の課題として受け止めた子の理由はまさに、求める子どもの姿であった。しかし、それほど多くはない。

(3) 学級担任の指導が反映をする
 学級によって習得率が違うのでその理由を尋ねた。
 全校指導の後、さらに指導をした学級は習得率が高いのは当然であるが、習得率が極端に低い学級があった。日頃の指導も行き届いている学級なので興味があった。推測するところ、学級担任を介しての指導は徹底するが、そうでないとそれほど関心を示さないということであろうと考えた。つまり、学級担任の判断が子どもの判断になるということであろう。熱心な学級に起こりうる一つの落とし穴である。

(4) 「聞く」を意識する指導の徹底
 「聞く」活動は、学習への意識が高くないと習得率は低くなるということは当然である。詩「落葉松」では低学年と教師のやりとりを聞いて、自分への話として聞ける子と聞けない子の習得の違いが明らかになった。
(京都女子大学)