教材を大切にして 読むことを考えながら
白 髭 英 之

 夏の国語研究会に参加し、1学期に取り組んだ「生き物はつながりの中に」の実践を発表させていただいた。いろいろとご指導いただいたが、その中で、教材名や挿絵、写真を大切にして学習に取り組むことの重要性を痛感した。

 9月の終わりから「みんなで生きる町」(光村6上)の学習に取り組んだ。本文を読む前に「みんなで生きる町」という教材名に着目した。みんな『が』生きる町、みんな『の』生きる町、みんな『で』生きる町というように助詞を置き換えて比べ、それぞれからイメ−ジすることを話し合うことで、みんな『で』生きるということはどういうことなのか、これからどんな学習をするのかということに気付かせたいと考えた。

 みんな『が』の場合は、
●一人一人が主人公というようなイメ−ジ
●他の二つと比べると、どちらかというとばらばらという感じがする
と子どもたちは話した。
 みんな『の』場合は、
●みんなのもの、ひとつのものを全員で守るというようなイメ−ジ
 みんな『で』の場合は、
●協力し合う、助け合う、といったように共に生きていくというイメ−ジがする
と話した。たった一文字違うだけで、子どもたちが感じ取ったイメ−ジが違った。

 本文を一読した際、多くの子どもたちが障害者や要介護者について考える学習だととらえていた。続いて教科書に掲載されている写真を見たのだが、車いすを使用している人、高齢者の方の写真があったので、ますますその思いを強くした。
 しかし、ある子が「高齢者の方の隣に犬がいる」とつぶやいた。「何で犬がいるんやろう?」「飼い犬かなあ」「偶然で、意味ないんちゃう」というような話になった。他の写真もじっくり見てみようということになり、ベビ−カ−を押している人、幼児の写真にも意識がいくようになった。しかし、施設を見学する子ども、自転車を押す青年の写真を見るとますます「何でやろう」という思いをもった。そこで、もう一度本文を読み返すことで「ユニバ−サルデザイン」の考え方に気付くとともに、高齢者、要介護者だけではなく、子ども、成人、健康な高齢者も含めて考える学習であることに気付いた。

 教材のいろんなところに、いろんな意味が隠されている。ちょっと触れるだけで、ちょっと掘り下げて考えてみるだけで、いろんなつぶやきがあり、そのつぶやきから気付きが生まれることを実感した。
(彦根市立城南小)