ふさわしい言葉をえらぼう 〜意味理解から言葉選びの活動へ〜
弓 削 裕 之

 ボキャブラリーは豊富だが、雰囲気で言葉を使いがち。そんな3年生の子どもたちが、言葉選びの授業に取り組んだ。一つひとつの言葉の意味を正確に理解し、じっくりと吟味した上で、状況に応じた言葉の取捨選択を行うことが目的である。

【学習過程】
@自分の知っている「気持ちを表す言葉」を書く。その意味を予想して書く。
A意味調べをし、自分の予想と比べる。
B「気持ちを表す言葉リスト」の中からいくつか選び、意味調べをする。
C夏休みの自分の気持ちに相応しい言葉を一つ選ぶ。
D言葉を選んだ根拠となるエピソードを書く。
Eみんなの前で自分の選んだ言葉を披露する。

 「気持ちを表す言葉リスト」は、プラスの感情とマイナスの感情に分けてまとめ、3年生には難しすぎる言葉もあえて含めた。難しい言葉の語感に親しむことが、言葉への興味を助長してくれると考えた。
 発表のねらいは、自分の選んだ言葉に責任を持つこと。予想以上に「自信がない」「これで伝わるかどうか不安」と言う子が多く、何度も自分のエピソードを見直し、訂正する姿が見られた。
 発表という場が、子どもたちの中の言葉に対する責任感を育てることを実感した。

 印象的な場面に出会った。「楽しい」という言葉を選んだ児童の中に、「友だちといっしょにえいがにいっていっしょにあそんだ」とエピソードを書いた子がいた。そこで、「その中のどんな出来事を言えば、みんなが納得するかな」と尋ねてみた。「友だちといっしょにあそんで・・・その友だちの妹が僕にひっついてきて・・・楽しかった」と答えたので、「それなら、楽しいという言葉がふさわしいね」と言うと、妹のエピソードを文に付け加えた。その児童が、自分の発表の直前に「うれしいのほうがふさわしい」と、「楽しい」から「うれしい」に変えたのである。最後の最後まで、言葉を吟味して選ぶことができた。

 まとめの感想には、普段は使わないような気持ちを表す言葉がたくさん登場した。
 今回の授業で、子どもたちは全員、言葉を前にして立ち止まった。安易に答えを出そうとせず、自分の気持ちに相応しい言葉を2時間かけてじっくりと考えることができた。その結果出てきた言葉は、やはり大切な言葉ではないかと思う。
(京都女子大学附属小)