▼バスを待っていると学生が手を振って駆け寄ってきた。真面目な学生で授業中の態度も印象に残っている。しばらく講義の内容などを話していた。すると彼女の友達が「先生に習っているの」と確かめ、講義の評価を聞くために「先生の授業は」と質問をした。すかさす「先生はこわいよ」という返事。その理由は「授業に遅れるのはいけないし、名前を呼ばれたら大きな声で返事をしないといけない」とのこと。

▼「名前を呼ばれたら返事をするの?」と確かめる彼女の友達に「返事が聞こえないと叱られるの」と言う会話。「どんなに?」と尋ねる友達の学生に、「HEIと黒板に書かれるの」とのこと。「叱られる」「こわい」の単語が一人歩きする。

▼「HEI」は、ある時、返事の聞こえ方を「HAI・HEI・HAAI・HAI・HEEI」と書いたことが印象に残ったらしい。「あなたの返事は、このように聞こえました」と事実を伝えた記憶はある。それを指導をしたと思っていても、注意をしているという気持ちはなかった。将来、教師を志す学生へ、「返事一つできない」と言われないようにという心配りだったが。

▼将来を思って指導をしたことが「怖い」「叱られる」では、ごんぎつねのごんではないが、「ひきあわないな」である。

▼適切に使われていない言葉は多い。この場合、被害者?それとも言い訳?(吉永幸司)