「も」に立ち止まってみる
岡 嶋 大 輔
夏休みも明け、9月も半ばを過ぎた1年生の教室。教材文「くじらぐも」(光村1年下)を扱い学習を進めている。その中の授業の一コマ。文中の一言、一文字に立ち止まって考える機会をと思い、次のように問うていきながら、考えを出し合った。 T 「くじらも、たいそうをはじめました。」の『も』から、何が分かりますか。 難解な問いに、全員の瞳が「はてなマーク」になっていた。 T いや、こういうこと。「くじらが」ではなくて、「くじらも」と書いているのは、なぜですか。 それなら考えられる、と言わんばかりに挙手の数が増えた。 C 「くじらも」だと、子どもたちといっしょに体操をした感じがします。 C 『も』は、くじらぐもがまねをしたみたい。 と、子どもたちは案外すぐに本質的な考えにたどり着いた。 T では、くじらがまねをした『も』は、他にありますか。 と、問うた。宝探しは、子どもの得意分野である。その問いに、さらに子どもは勢いづいた。 「くじらも、空をまわりました。」 「くじらもとまりました。」 「くじらも、空でまわれ右をしました。」 「くじらもこたえました。」 「くじらもさそいました。」 と、出された。 その途中、「しんこきゅうもしました。」が出された時に、また、立ち止まって考えを出し合った。 T この『も』は、まねをした『も』とは、またちょっと違うね。新しい『も』です。何の『も』でしょうか。 C 深呼吸を、後でした感じがします。 C ついでにした感じかな。 C 深呼吸までも、という意味だと思います。 どの発言も、うまい言い方ではないかもしれないが、的を射ている。 もう一つ、「男の子も、女の子もはりきりました。」に出てくる『も』についても考えを出し合った。 C 男の子も、女の子も、みんな、という意味で使っている。 C 一緒になってという感じがします。 等と、たどたどしくも、鋭い発言が続いた。 1年生の今の時期にどれだけの考えが出せるのかと、少々のチャレンジではあったが、1年生だからこその言葉に対する敏感さをつくづく実感させられた授業の一コマであった。 (滋賀大学教育学部附属小)
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