笑い話のツボ 〜笑いを科学しよう〜
川 那 部 隆 徳

 「笑い話のツボ」(以下「ツボ」)とは、笑い話のおもしろさの急所であり、それらを見出したり、おもしろさの特徴を分析したりすることを「笑い話を科学する」と本学習では呼んだ。
「ツボ」を次のようにとらえた。
 ○「落ち」の巧みさ。
 ○憎めない愛着すら感じさせる性格を背景にした、登場人物の間抜けた突拍子もない行動。
 ○社会的弱者(幼い、貧乏、身分が低い等)が、機転を利かしたとんちで、強い立場にある者に一杯食わせる設定。
 ○現実離れした話題や話の展開・皮肉・洒落など。
 そして、おもしろさをより効果的に演出するものが、「ボケ」と「ツッコミ」の掛け合い、言い回しや方言、擬態語や擬音語など。
 このような笑い話のおもしろさを味わい、作品の比較を通して「ツボ」を解き明かしていくことや「ツボ」を読みの視点として読書を進めていった。

【落語ととんち話、それぞれの「ツボ」の比較場面】
C とんち話に出てくる主人公は、例えば、吉四六さんは、とっさに頭を働かせて、とんちで殿様をギャフンといわせている。
C 殿様に「わしを上手にだましてみよ」と言われたときなんか、頭フル回転してたと思う。
C とんちは知恵みたいなものだと思うし、とんちが話の最後にあって、落語も落ちが最後にあって、最後におもしろいところがあるところが似ている。
C でも、落語に出てくる人物は、「あたご山」の一八みたいに、小判を取りに行って忘れてきたり、「粗忽の釘」の金さんは隣の家にまで釘を打ったり、おっちょこちょいで、とんち話に出てくる人物とはちがう。(後略)
子どもたちは、このような話し合いを通して、各々がつかんだ「ツボ」の特徴が一般化され、前述のような「ツボ」に気づいていった。

 本学習のまとめでは、様々な作品から見出してきた「ツボ」の具体例を示しながら、笑い話の仕掛けについて解説文を書いたり、気に入った笑い話を選択して、そのおもしろさがあらわれるように音読をしたりするといった表現活動を取り入れた。以下は、児童が記した解説文の感想部分である。
「笑い話のツボがだんだん分かってきて、ボケとツッコミとか落ちなどいろいろツボを見つけて、勉強しながらいろんな本と出会えたからとてもおもしろかったです。授業以外でも図書館で落語の本やとんち話をかりて読みたいです。」
 そして、夏休み明け、教室は「寄席」に様変わり。扇子と手ぬぐいを駆使しながらの熱演ぶりに教室が沸いた。
(滋賀大学教育学部附属小)