「活用力」を考える
吉 永 幸 司

1.「活用力」について
 新学習指導要領が告示された。その方向性のなかで「日常生活との接近を図るー言語活動を活発化する」ということが示された。「生きて働く力」(活用力)をつけることである。
 これまでも、全国学力調査でこの方向を示すような問題が出た。また、国語力育成の地域指定研究会で「活用力」に関わる内容が示されていた。これらのことからある程度イメージできていたが、具体的にどうすることかを考える必要がある。「さざなみ国語教室」では、3月の月例会で、「何をイメージするか」ということを書き出すという研究作業を行った。以下に示すのはその概要である。

2.「活用力」のイメージ
○川那部さんは、文章題を読んで題意を理解するのは勿論、数量の概念を判断する力は確実に言語力であると考えた。「割合」の文章題題では「比べる量」「もとにする量」の読み解きが必要であるという考えからである。

○三上さんは、理科の学習で、植物の育ちを観察し記録する学習活動では、絵と文で表現するが、絵の上手な子が高く評価される傾向がある。実験の記録を書くという場合も記録として何が大事であるのかを問いかけることで言語への意識を高める。それを積み上げることで、理科学習に必要な語句が形成される。つまり、教科における語句の問題と位置づけた。

○北島さんは、社会科で「戦国時代の武将を選び新聞にまとめる」という学習を通して、資料を探す、選ぶ、書く等の総合的な学習に言語力がどのように響いているのかという分析が必要であると、実践から言語力の方向を示した。

○西村さんは、算数で解を求めるだけでなく思考過程を文字化させることが必要である。書くことで思考の筋道が具体的になることによる言語力の大きさを主張する。

○中嶋さんは、算数では文章を記号化できる能力が必要であるのにその部分で抵抗がある。「ふえました」「より大きい」等の言葉を記号化するには、言葉とイメージを結ぶことが「活用力」につながるという考えである。

○伊庭さんは、体育のサッカーやバスケットボールの試合では、作戦図や試合後の反省は適切な表現の場で学習効果が高まるという考え。

○好光さんは、算数の分数を例に、言葉を記号化する過程で学習の必然性を感じさせることが「活用力」であると考えている。

○岡嶋さんは、論理的に述べる力・例示する力などが、教科を貫くものと捉えている。
(京都女子大学)