「ありがとう」でさわやかに
森  邦 博

 本校の校内研究協議題のテーマのひとつに『コミュニケーション力の育成』がある。大津市教育委員会の今年度の「学校・園教育の指針」にも、さまざまな教育活動を通じて子ども一人ひとりにコミュニケーション力を育成することが示されており、多くの学校で取り組まれている。
 本校でも教室での友達の呼び名に「〜さん」づけをしようや、挨拶を進んでさせようなどの具体的な提案があり、日々の学校生活の中で当たり前にできるようにしたいという願いを持っている。

 その中のひとつに、「職員室に用事で来たときの言葉遣いの指導」を徹底しようというものがある。教頭、校長が指導の担当となることが多い。
 ある6年生が、「理科室の鍵取りに来ました」と言って入って来た。そこで、教頭が「どこのどなたですか?」(何年生のだれですか?)と聞き返し、言い直しをさせる。このことは昨年度から続けているということで、当初から比べるとずいぶん定着してきた、あと少し徹底を図りたいとのことである。「凡事徹底」である。
 しかし、まだ歩きながら、目線も合わさずに符丁のように唱えるだけの場合もあって、コミュニケーション力の育成面からみるとまだまだと、反省することも少なからずある。

 そんなある日、2年生の1人が、
「2年生○組の○○○です。○○室の鍵を取りに来ました」
としっかりと言えた。うれしくなって、
「しっかり伝えられたね、すばらしいね、はい、ご苦労様」
と鍵を渡したのだった。すると、
「ありがとうございました」
と戸口でにっこりと笑顔を返し、さわやかな気分にさせてくれたのだった。
 その瞬間「これだな」と思った。コミュニケーション力とは、言葉を通じて相手と自分とのさわやかな関係作り上げる力のことだ。

 それから、子どもが職員室に来たら、この子はどこまでしっかり言えるようになったかな?という迎え方をして、
「しっかりと最後まで言えたね」
「わかりやすい言葉で言えたね」
「きれいな、いい声で言えたね」
「顔を見て言えてるね」
「いい顔だね、よい態度だね」
等できているところを評価する言葉や、
「では、しっかりと勉強(そうじを)しなさいね」
「がんばってね、勉強しよう」
などの励ましも言葉も添えている。
 せっかくの会話の機会、お互いがさわやかに感じるときにしたいと思っているのである。
(大津市立田上小)