▼1つの歯車が狂うときがある。子どものトラブルをしっかり解決しないまま帰らせてしまった時などである。必ず翌日の朝、電話が職員室へかかってくる。それも教室へ向かおうと職員室を出ようとするタイミングのよさ。電話を受け事情を説明している間に5分や10分はすぐにたってしまう。

▼教室では先生を待っている子が辛抱できなく席を離れる。「静かに」と言い合っている間に諍いが起こる。鉛筆をさわったとか嫌な顔をしたとか。そのうち教室が騒々しくなる。

▼電話を終えて少し動揺して教室に入る。立ち歩く子に注意をする。嫌なことを言われたと訴えに来る子がいる。「あなたたちはどうしていつもこうなのですか」と大声を出して注意をする。ようやく静かになる。しかし、教室は勉強しようという雰囲気とはほど遠い。

▼もし、電話があの時刻にかかってこなかったら、少なくとも時間通りに教室に向かっているはずである。小さな諍いは起こっていなかったはずである。貴重な時間のずれが大きなほころびになる。

▼親は不安なのである。子どもがことの子細をしっかり伝えていないことが多いから。学校のトラブルをしっかり解決して帰らせることは勿論、できごとを丁寧に話せる子どもを育てることである。事実を正確に伝えるという言葉の力を育てるようにしたい。(吉永幸司)