「読み語り」に学ぶ
岡 嶋 大 輔

 1年生の教室。となりの学級の先生が楽しい絵本をたくさん持っていらっしゃるということも手伝い、学級開きから毎日のように絵本の読み語りをしている。

 ある雨の日の読み語りに「ぞうくんのあめふりさんぽ」(なかのひろたか作・絵/福音館書店)という絵本を扱った。
 絵本の冒頭、今日は雨降りなのにぞうくんが大喜びをしている場面。「えっ、雨が降っているのに嬉しいの?」「散歩に行って大丈夫?」等と、わずか1ページのところで、子どもたちは様々な反応を示す。大人ならさらっと流れそうなところも子どもはちゃんと捉えている。それだけ、絵本の世界に入り込みやすいのであろう。1年生の感性の鋭さに驚かされっぱなしの毎日である。かめくんの背中にぞうくんたちが乗ろうとする場面では叫び声、みんながバランスを崩した場面ではさらなる叫び声…。しかし、最後の場面では、安堵の溜息や拍手までも。まるで1本の映画を観たかのような時間を共有できる。

 この絵本のいいところは他と同様にたくさんある。ぞうくんを取り囲む人物達が「自然に」優しい。一生懸命が故の失敗も笑って許し合う大らかさがある。その失敗が見事にプラスに変わる。場面の繰り返しが楽しくて分かりやすいし、様子を表す言葉がふんだんにちりばめられている。
 低学年ぐらいであれば、そのような内容や事項を「取り立てて」学習する以前に、そのような正しく美しい言語環境の中に自然に浸り、それが普通であるという言語感覚を身に付けることが大切なのだとよく思う。さらには、人間関係ということについても同様に、何が普通なのかということを無意識下で形成するための「環境」が重要だと考えている。

 数日後の学年保護者懇談会では、保護者に向けて「ぞうくんのあめふりさんぽ」の読み語りをした。素直な反応はおもてに表れないにしても、最後の場面で子どもの時と同様、溜息がもれ、拍手が起こった。その後、絵本の良さについて改めて考える場も設けた。私からは、
 o 聞き手が読み語りをする人の愛情を感じることができること。
 o 想像する力を養えること。
 o 様々な人の立場を擬似的に体験し考えられること。
 o 優れた言葉や絵に触れることで、それを自分なりにモデル化し生活の中で生かせること。
 o 集中して聞く時間が持てること。
等々を話させていただいた。
(滋賀大学教育学部附属小)