「どうぞ」「はい」
西 村 嘉 人

 新しい年度がスタートした。
 今年は29名の5年生の子どもたちの担任。始業式の担任発表の時に素晴らしい笑顔で迎えてくれた素敵な子どもたちである。
 今年度、学級を担任するにあたって「これだけは絶対に!」と密かに心に決めていたことがある。子どもたちの、
「はい。」
の返事が気持ちよく響く学級にしたいという願いである。

 そこで、始業式後の学級開きの短い時間に
「これから一人一人の名前を呼んでいきますから、できるだけ大きな声で『はい』と返事をしましょう。それから、先生と力いっぱい握手をしましょう。」
と指示をして、子どもたちとあいさつを交わした。

 次の日には、健康観察の時に、
「一人ずつ名前を呼んでいきますから、『はい。元気です』のように『はい』の後、一呼吸開けて健康状態を伝えましょう。」と、「はい」の返事を意識させる話をした。たったこれだけのことで子どもたちの「はい」の返事がずいぶん良くなった。「は」に力が入り、「い」がしっかり聞こえるようになったのである。

 授業中も、必ず「はい」が言えているかどうかを意識して聞き、言えていない子どもには、
「返事をしてから、立って話をしましょう。」
と繰り返し言葉かけを続けてきた。意識して教師が言い続けていると子どもたちは変わるものである。返事をせずに話し出す子どもに、他の子どもが
「返事、忘れてるよ。」
と声かけをするようになってきたのである。

 子どもたちの変化がもう一つ。 わたしは、長年の癖で子どもを指名する時に
「○○さん、どうぞ。」
と、「どうぞ」を付ける。
 いつの間にか、この「どうぞ」を子どもたちが使うようになってきたのである。学習で話し合いが中心になる時には、相互指名をさせているのだが、子ども同士でも、
「○○さん、どうぞ。」
と言える子どもが多くなってきたのである。

 定着してくると気持ちの良いものである。
「○○さん、どうぞ。」
「はい。…」
こうしたやり取りが授業の中にあると教室の空気がずいぶん和やかに感じる。
 帰りの会でも、
「○○さん、どうぞ。」
「○○係さん、どうぞ。」
と、当番の子どもが司会・進行している。
 気持ちのいいスタートである。
(彦根市立城南小)