巻頭言
学校に元気を!!
徳 岡 慶 一

 いじめの陰湿化、不登校・学級崩壊の深刻化、子どもたちの学習意欲や規範意識の低下、モンスター・ペアレンツへの対応、問題教師による事件の増加等、学校をめぐる状況は悪化しています。そしてマスコミは、学校や教員をバッシングすることに熱心です。その上文部科学省や教育委員会が打つ手も、学校や教員を萎縮させるようなものが多いです。教員免許更新制の導入、学校評価・教員評価の推進、指導力不足教員に対する分限制度の厳格な運用、給与面での優遇措置の見直し等々。

 それでは学校や教員を叩いたり萎縮させれば教育は良くなるのでしょうか。否。教員に元気がなければ、それが児童・生徒に伝わって彼らも元気が出ないのではないでしょうか。そこで今こそ学校や教員を元気づけるような施策が必要です。具体的には、教職員定数の増員、教育予算の増額等です。

 折しも中央教育審議会が「ゆとり教育」の反省として次の5点を挙げています。
 @文部科学省と学校関係者・保護者・社会との間に「生きる力」の必要性や内容について十分な共通理解がなかったこと、A子どもの自主性を尊重する余り教師が指導を躊躇する状況があったこと、B各教科と総合的な学習の時間との適切な役割分担と連携が必ずしも十分に図れていないこと、C基礎的・基本的な知識・技能の習得や観察・実験やレポートの作成、論述といった学習活動を行うために現在の小・中学校の授業時数は十分ではないこと、D家庭や地域の教育力が低下したことを踏まえた対応が十分ではなかったこと。(中央教育審議会教育課程部会「審議のまとめ」2007年11月)

 これら一つ一つはもっともな指摘ですが、私はゆとり教育が十分な成果をあげることができなかったのは、教職員定数の増員や教育予算の増額等、教育環境改善のための具体的施策が採られなかったことにあると思います。本来ゆとり教育が目指す丁寧で質の高い教育を実現するためには人的・物的資源を豊富にする施策こそが必要だったのに、実行されなかったのはとても残念です。もっとも今回の「審議のまとめ」には教職員定数の増加等の施策が盛り込まれており、前回と同じ轍を踏まないことを期待しています。
(京都教育大学)