授業風景より 〜初任者研修
高 野 靖 人

 初任者研修の拠点校指導教員として、ほぼ毎日4校4名の初任者の授業を参観している。すべて2年生の担任なので、同じ学習場面を参観することも多く、別室での研修の中でも、各校の実践や試みについて紹介し、研修の一助としている。

 さて、先日参観した国語の授業について紹介する。教材は、「雨の日のおさんぽ」(セフラー・文 東京書籍)。祖父母にプレゼントされた雨具を身につけ、祖母と雨の日の散歩に出かけた「ぼく」のうきうきとした気分、またそこでの発見や楽しさが生き生きと描かれた物語である。
 その中で小鳥について書かれた場面での授業風景。雨の日の小鳥の様子が知りたくなった「ぼく」は、祖母と実際に観察する。雨にぬれた小鳥の姿を見つけた「ぼく」に、祖母が雨に強い羽の秘密について教えてくれる場面である。

 A小学校では、学級の児童に、物語の「おさんぽ」の中で、最も心に残った出来事を発表させていた。すると、小鳥について祖母が語った羽の秘密をあげる児童が多かった。祖母はこう語る。「羽にあぶらがあるから、少しぐらいぬれてもだいじょうぶよ」と。

 B小学校では、小鳥の数が話題になっていた。少なくても何羽いるのか。教材では、「ひさしの下」「かべのくぼみ」「さくの上」と見つけた場所が書かれ、それぞれ何羽いたのかは、書かれていない。そこから類推すれば、「最低3羽」と答えたいところだが、答えは「4羽」。なぜなのか。実は、挿絵に「さくの上」の小鳥が2羽描かれていたのである。

 さて、C小学校の担任は、2年生の子どもがイメージしにくい言葉について、絵を描いたりして伝えようと努力していた。例えば、「ひさし」。 家の略図を黒板に描いて、その片屋根をわかりやす く説明していた。この後、「かべのくぼみ」「さくの上」と進んだ後、「ぼく」は、この小鳥たちが「びしょぬれ」になると心配する。そこで、前述の祖母の蘊蓄が語られるのである。さて、この日の授業では、「びしょぬれ」あたりは、淡々と進行してしまった。「ひさしの下」や「かべのくぼみ」に雨宿りしている小鳥は、「びしょぬれ」にはならないのではないか。だからこそ、3つの場所が並列では書かれず、「さくの上」だけ、別の文として示されているのである。辞書的な「ひさし」の意味だけでなく、そこにいる小鳥の姿までイメージすれば、「びしょぬれ」との違和感を感じられるのでは、ないだろうか。

 私にとっても、授業を見直すチャンスであり、喜びでもある。
(大津市立仰木の里小)