複 眼 的 思 考
森  邦 博

 「伝え合う力」を育てる校内研究を進めてきた学校の研究推進役の先生方と協議する機会があった。
A 「伝え合う力」を育てるために学年別の評価基(規)準表を作成した。話し方のルールを決めて繰り返し練習の機会を作った。授業時間にも話し合う場面を必ず作るようにしてきた。
B それで、話し合いの型に沿っての話し合いは大分できるようになってきた。
C これまでいろいろな取り組みをしてきて、話し合う前に書くことや、読んで自分なりの意見や感想を持って話し合うことが大切だと感じるようになった。
D 書くことは自分の考えをまとめることになるし、読むことも同じように自分なりの感想や意見をも持つことになる。自分なりの意見や感想をもっと話し合う場面で出せるようになってほしい。
と、話し合いは進んだ。

 Aは「取り組んできたことの振り返り」、Bは「その成果のまとめ」、Cは「課題」、Dは「次の目標」と言うことができる。私は聞いていて2つのことを考えていた。
 1つは「Plan−Do−Check−Action」である。「PDCA」を繰り返すことによって、目標達成に向けての実践活動や取り組みを、見通しを持って計画的に進めていく方法である。すると、Dの発言内容がこれからの進む方向となる。
 結論は出ているように思った。書いて自分の意見や感想をまとめる「考えて書くこと」の指導、読んで自分の意見や感想をまとめる「考えて読むこと」の指導を、特に、国語科の授業で充実することが新しい「P」(目標)となる。

 研究実践の推進役は大きな視点から方向づける役目を担っている。
 同時に、昨年度の教育研究所の研究協力校、長等小学校の歩みを思い出していた。長等小学校では自校の研究紀要を読み直し、過去の実践事例を参考にした研究授業を行ったが、そのとき指導案の再構成案を作った。過去の指導案はそのときの児童の実態や研究課題から導き出されたもの。だから、そのときの子ども達にとって効果的であった指導案でも、実態や課題が変わったときには再構成することが大事。またどこを、なぜ、どのように変えるのかが見えて、新指導案に反映できたら、研究実践は充実することを学んだ。そこでこのことを紹介させてもらったのだった。

 実践研究は、日々の小さな工夫の積み上げなくしてはないことも、推進役はしっかりと自覚していたい。研究推進の舵取りは、足元の実践を見る目とともに、長い見通しを見る複眼的思考が求められる。
(大津市教育研究所)