▼子どもの言葉を見ているうちに面白い傾向があることに気づいた。語彙力の少ない子は、「みんなが言っている・おもしろい本・わからない」という言葉をよく使う。「みんな・おもしろい・わからない」は広い範囲を表している。だから相手の思いを超えたところで伝わるから理解が得やすい。「みんながゲームを持っている」の類である。しかし、広い言葉を使うのに慣れると、考え方が消極的になる。「難しいからやめる」「面倒だから行かない」など。

▼次に、「できる」を含めて可能を意味する言葉の使い方が気になる。「漢字が書けない」「本が読めない」「宿題ができない」を耳にすることがある。よく考えてみると、「宿題をしなかったから出せない」のである。「漢字を書かないから漢字が書けない」のである。「ノートに書かないから、良いノートが書けない」のである。

▼さらに次のような言葉の使い方がある。友だちの様子を語る子どもの言葉を気にして聞いていると、「明るい子」と「いたずらな子」という言い方をされている場合がある。同じ子であるが、よく聞いてみると肯定的に見るか否定的に見るかという違いである。否定的に見ている子の言葉に乗るととんでもない落し穴に落ちることがある。

▼語彙に視点を定めて言語生活を見ていくといろいろな発見がある。(吉永幸司)