お話の山のぼり(後編)
岡 嶋 大 輔

1 「山の線」活動の意味
 前号では「名前をみてちょうだい」(東書2年下)の話の盛り上がりや主人公の気持ちを「山の線」(一般的には心情曲線)に表すという活動について述べた。
 今回は、「山の線」を話し合い活動でどのように展開をしたのかについて述べたい。

 「山の線」の効果は、線を描く活動によって表面的な読みから言葉に立ち止まる読みに子どもを育てたことであった。
 例えば「きつねは、しぶしぶ、ぼうしをぬいで名前のところを見せました」は「しぶしぶ」だから下げるとか、主人公のえっちゃんは喜んでいるから上げるというように考える必要が生まれてくる。「山の線」を描くことによって自らの読みを説明する場に子どもを立たせることになる。

2 「山の線」で交流する
 子どもたちが勢い込んで話し合ったのは、えっちゃんの大切なぼうしが風にとばされた後から、線が上がるか下がるかを議論した時である。
「線が上がる」と考えた子は次の理由からである。
 ○話がここから盛り上がるから
 ○ぼうしがどうなるのかと思うとどきどきする。
 これらの考えの根拠は、お話の全体を見通しているところに価値がある。一方、「線が下がる」と考えた子の理由は、
 ○えっちゃんがびっくりしてどうしようかと思ったから。
 ○大切なぼうしがとばされていやな気持ちだから。
である。主人公の心情をもとにして(あるいは主人公に同化して)「山の線」を描いている。

 話の展開を足場に考えている子と主人公の心情をもとにしている子とでは話し合いが交わらないが、「山の線」という具体的な根拠をもとに話し合う過程で次のことに気づいていった。
 @同じ文でも、自分と違う考えがあること。
 A友達に自分の考えを理解してもらうには、分かりやすく言う必要があること。
 これらの気づきは、これからの学習の力になると思う。

 学習後の感想で多くの子が楽しかったと書いたのは、授業の後半で議論した「どこの場面を一番高い山にしたのか」であった。
 自分が感じた「一番高い山」は、当たり前のように誰もが同じ場面を選んでいるものと思い込んでいたが、いくつかの場面が「一番高い山」として紹介され、しかも、それぞれの説明に納得したという内容の感想を書いてきた子がいた。
(滋賀大学教育学部附属小)