線を引きながら物語のよさを見つける
蜂 屋 正 雄

 『ゆうすげ村の小さな旅館』(東書3年上)の学習では「読み物教材を読み、自分なりの感想を線を引くことによって残すこと、自分の感想を交流する」という単元目標にそって、
(1) 本文から自分自身が感じたことを、どんどん書き留めていくことで、自分で学習する力をつけること。
(2) その上で友だちの発見と自分のものを比べながら聞くこと。
この2つを大きな柱として学習展開を考えた。

 子どもたちには、赤・青・緑の線を引き分けることを指示した。これは、斉藤孝さんの「三色ボールペン」に触発され、数年前から取り組んでいる。
 赤線は、このお話の「ひみつ」だと思うところに線を引く。このお話に出てくる女の子は実はウサギで、女の子が育てた大根には、耳の良くなる魔法がかけてあるというこの話の柱になる「ひみつ」について書いてある部分に引く。
 青線は、このお話に出てくる大切な言葉、「誰が」「いつ」「どんな様子で」「なにをしたか」がわかる文に線を引く。教師の思惑としては、青線を追いかけると、この物語の大筋がわかるように引かせたい。
 緑線は、自分が面白いと思ったところ。要するになんでもありで、この線だけには「間違い」はない。物語に出てくる「ぶり」が好きなら、そこに線を引いてもいいし、くるくると良く働くという文章の「くるくる」という表現が面白いと感じれば、そこに線を引いてもよい。おばあさんや女の子のやさしさがよかったと思えば、そこに線を引いてもよい。

 はじめは、教師が自分の感想を話しながら、黒板に掲示した拡大教科書に線を引いてみせる。「先生だったら、ここは緑の線を引く。あまり人が来ないんだなって独り言がいいたくなるから」などと、話をしながら線を引いて見せた。
 次に「みんなだったら、どこに何色の線を引く?」と問い、また、数段落をみんなでやってみる。
 その後、自分で線が引けるかやってみた後、発表させる。普段、発言をためらってしまう子も、目の前に自分の思いを表した教科書があるので、比較的発言しやすい。

 なれてくるうちに、どの子の教科書も線だらけになっていった。
「先生、青と緑と両方線引いていいですか?」
「なんか、すごく勉強してるみたいな教科書になったわ」
といった声を聞くことができた。
 今後は、特に、緑の線を引いたところに「どうしてそこに線を引いたの」と、問い返すことによって、子どもたちのいろいろな思いをもっと交流できたらと考える。
(草津市立笠縫東小)