題名を読む「一つの花」
吉 永 幸 司

1.「一」を大事にする
 「一つの花」の題名を板書し、どんなことを考えたかを尋ねた。反応はなかった。当然である。何を問われているのか、どのように答えるのか分からないのである。
 次に、「一」を板書し、意味を考えさせた。これには反応が早かった。
C 一つ、二つと数えることがある。
C 一番、二番、三番は順番。
C 一番大事なものという時のにも使う。
 このようなつぶやきを拾いながら、「一」を使う文を考えさせた。
C テストで、あと一つできたら 満点。
C リンゴが一つ、ミカンが三つ、 一本でもにんじん。
 この話し合い、少し脇に外れそうになったので、取りやめた。
 念のために辞典で「一」を調べさせた。子どもたちの予想通りの内容であった。

2.「一つ」と「一輪」
 「花」も同じように、考えたことを発表させた。「一」の学習があるのでそれほど難しいことではなかった。
C 美しい花やきれいな花
C 桜やひまわりというな名前
C 大きい花と小さい花
 放っておけば、どこまでも広がりそうなので次のように話題を変えた。
T 「花」は「一つ」でなく「一輪」と数えるのでしたね。あるいは「一本」と。
 この揺さぶりには「一つ」でよい時もあるという子が多かった。
 「一つ」や「花」はどんな意味があるのかをたくさん考えるという学習をして、本文を読ませた。

3.題名の読みを生かして書く
 「一つ」と「花」の意味を自分の言葉で説明するように指示をした後、全文を読ませた。
 次の文章は、全文を読んだ後に書いたものである。
「一つだけがたくさんありました。一つだけちょうだいばかりでした。」
「一つだけの喜びというのがあって何だろうと思いました。」
「一輪のコスモスであったり、一つだけのお花であったりして、お話のひみつかなと思ました。」
 題名を学習したことが文章の内容と関わって読もうとする方向になっていることが分かった。
 この後、主人公や物語の中で繰り返し出てくるおにぎりと山場にでてくるコスモスを感想にいれることを条件した「私の読み取り」を書かせ、最初の2時間の学習を終えた。 題名を大事にすることで、自分の読みを作る試みである。
(京都女子大学)