お 話 の 山 の ぼ り
岡 嶋 大 輔

 物語を読む楽しさの一つとして、話を読み進めるうちに話の世界に入っていき、話の盛り上がりを感じたり、主人公に感情移入してハラハラドキドキする等の気持ちの変化を感じたりすることが挙げられる。その楽しさは、自分はどこで話の盛り上がりや登場人物の気持ちの変化を感じたのかということを自覚したり、それらを友だちに知らせたり、友だちの思いや考えに触れたりすることや、そのような交流を通して新たな発見や気付きをしたりすることで倍増されることであろう。

 そこで、自分はどこで話の盛り上がりや登場人物の気持ちの変化を感じたのかということを文章に沿って「山の形」に表していく学習に取り組んだ。その「山の形」における山の位置や高さ等にそれぞれの子どもの思いや考えが表れる。それらを交流し、自分と友だちとの相違点や共通点について考えを出し合うことで、自分の考えを見つめ直すきっかけとし、読みを通して伝え合う力を育てるとともに自らの読みを深めることができると考えた。

 教室は2年生。教材文は「名前を見てちょうだい」(東書2年下)と「ニャーゴ」(光村2年上)を使用した。
 第一次で教材文「名前を見てちょうだい」のおもしろいと思ったところを出し合ったり、登場人物を比べたりして読み深めた後、第二次でその教材文を「山の形」で表していった。
 まず、教師の作った簡単な盛り上がりのある文章に沿って子どもの発言を拾いながら、クラス全体で一緒に「山の形」を描き、活動のイメージが持てるようにした。山の線は、「話の盛り上がり」「主人公の気持ち」で上下することを示し、どちらで線を描いていくかを選ぶようにした。

 そして、教材文「名前を見てちょうだい」に沿って「山の形」を描いていった。ポイントとして示したのは、
 ・「山の形」に正解はなく、人によって様々な形があってよい。
 ・どうしてそこで上下したのか理由が言えるとさらによい。
という二つである。「山の線」の頂上や谷、坂の線に、なぜそこでそのようにしたのか説明ができればそれを書き加えるようにした。

 嬉しかったのは、初発の感想においてすぐに「ない」と言っていた子も楽しんで山の形が描け、さらに「山の線」の説明もたくさん書けていることだった。
 「この文章で線は上がるのかな下がるのかな」と考える中で、一つひとつの文に立ち止まって自分なりの考えを持とうとする第一歩を踏み出す瞬間がそこにあった。
(滋賀大学教育学部附属小)