巻頭言
主語・述語を使った絵本作り
平 山  審

 子どもたちは、文の中に主語や述語があることや、主語と述語がきちんと照応していないと文の意味がわかりにくくなることをふだんあまり意識していない。
 そのため、子どもたちが書く文章は、主語と述語の関係があいまいであったり、また、詳しく述べようとするあまり、主語と述語がねじれたりすることもある。まだまだ文の構造をしっかり理解できているとはいえなかった。

 文の基本構造は、主語と述語からなること、それだけでも文ができることである。文章を正確に書いたり、正しく読解したりするためには、主語と述語の関係をしっかりと把握することが大切だ。
 指導要領では、言語事項に関して、上の学年においても、児童の実態に即して、その内容を螺旋的・反復的に繰り返し学習するよう配慮することが書かれている。

 文法を教えるにあたり、形式的に押し付けるだけではなかなか身につかない。子どもたちの生き生きとした表現・理解活動と結び付けなければならない。そこで、主語と述語を使った絵本作りに取り組んだ。
 文は単文で、主語は最後まで変えないようにした。単文にすることで、主語と述語が一回ずつとなり、文の構造がわかりやすくなる。また、主語を変えないので、書き手の視点が主語(主人公)だけになり、どの子もストーリーが考えやすくなる。できた文章を、班の中で互いに推敲し合い、一ページに一文として、レイアウトを考え、その挿絵を描いた。
 そして、交流している一年生に自信を持ってでき上がった絵本を読み聞かせた。

「雲のぼうけん」
 雲は、南の空で生まれた。
 雲は、風のバイクに乗った。
 雲は、友だちの所を尋ねた。
 雲は、台風のように合体した。
 雲は、ビュンビュン回転した。
 雲は、ザーザー雨をふらせた。
 雲は、「ねえねえ」と話しかけた。
 雲は、友だちにむしされた。
 雲は、雷をゴロゴロ落とした。
 雲は、傷つきやすい性格だ。
 雲は、今も君の頭の上の空にいる。

 この学習を通して、子どもたちは、主語と述語の関係とその役割を理解した。また、楽しんで気持ちや場面を想像し、構成を考えて絵本作りをすることができた。
 そして、今一度、自分の文章や音声表現を見つめ直すいい機会となった。
(宝塚市教育委員会)