二 つ の 心 ー語彙をふやす(4年)ー
吉 永 幸 司

1 語彙を増やす
 「語彙を増やす」ための学習活動としては、辞書を活用する、読書をするが考えられる。これは、語彙量が少ないという考えが前提にある。しかし、子供の作文では、語彙量が少ないので文章に豊かさが感じられないということの他に知っている語彙を使わないということがあるように思う。
 例えば、「痛い」を表現する場合「とても痛い」が一般的である。しかし、「ちくっと痛い」「ずきずきと痛む」というような書き方をしないのは、知らないのでなく使おうとしないところに課題がある。 「語彙を増やす」という指導に、「知っている語彙を進んで使おうとする」を取り入れることが大切であると考えて指導を考えた。

2 題材「二つの心」の意図
 話題としたのは、電車に乗った時、高齢者に席を譲るかどうか迷ったり、宿題をするかテレビを観るかを決めたりする時、二つの心が葛藤をする。
 心と心の対話を「言いました」に置き換え、語彙に着目させることを目的にした。
 到達目標としては、場面の設定と心の会話、会話に続く「言いました」を考えて書くことにした。

3 指導の概要
 指導は次の通り。(1時間扱い)
 (1) 語彙を増やすことを目的にした学習であるという目標を理解する。
 (2) 葛藤場面を想定し、二つの心の言った言葉を考え、会話文で書く。
 (3) 会話文に続く「言いました」に代わるる言葉を5種類以上考え、文章に書く。(短作文)
 (4) 友達の使っている「言いました」に代わる言葉をノートに写したり作文に書き加えたりする。
 この指導過程は「言いました」に代わる言葉を増やすことが目的であるので、葛藤場面の設定が思い浮かばなかったり、二つの心の会話文が書けない子には負担を取り除くような個別指導をした。

4 指導の結果(文例)
 「言いました」に代わる言葉を5つ以上見つけることは難しかったようである。「小さい声で言いました」のように修飾語を増やす子が多かった。
 次の短作文は、電車の中を想定して二つの心を書いたものである。
電車におばあさんが乗ってきました。一つの心が、
「席を代わってあげよう」
と、耳元でつぶやきました。
 すると、もう一つの心が、
「はずかしいから、やめよう」
と、一つの心をおさえるようにささやきました。
(京都女子大学)