▼戦後、祖国の誇りや自信を失うように教育され、すっかり足腰の弱っていた日本人は、世界に誇るべき我が国古来の「情緒と形」をあっさり忘れ、市場経済に代表される欧米の「論理と合理」に身を売ってしまったのです。ー『国家の品位』(藤原正彦著・新潮社)の「戦後」から始まる言葉に考え込んでしまった。戦後の教育を受け、教育する立場にいたものとして現在の世相は複雑である。しかし、今更、時代の流れを戻すことはできないので現在の実態をしっかり把握し、これからの教育の方向を考えることが大事と考える。

▼多くの教育関係者と話していて共通するのは、子どもが自己中心になっていて、周りが見えていないことである。ある保育園では遊び道具を片付けることを促しても「ぼくは遊んでいないのに、どうして、お片付けをするの」と言う幼児が多くなったという。また、ある小学校では、危険な遊びを注意されて「怪我をしないのにどうして注意を受けるのですか」とか「今まで、注意を受けたことがないのに、何故、注意をするの」と言って、素直に意見が聞けない子どもがいるという。このような実態の子どもたちに言葉で考える力を育てることが急務であろう。

▼国語力育成が教育の課題になる。「一に国語、二に国語、三、四がなくて五が国語」は藤原正彦氏の言葉である。(吉永幸司)