第10回「新しい国語実践」の研究会滋賀大会
分科会「言語事項」
中 嶋 芳 弘

 第1日目、「WB言語事項」分科会では、三つの提案があった。

○「表現活動との関連を図る中で確かな力を育成する言語事項の指導」 熊本県・佐藤俊幸教諭の提案。
 五年生になると、漢語や外来語などに触れる機会も多くなり、これまであまり意識しなかった漢語や外来語についても関心を持つようになる。和語・漢語・外来語という言葉やその意味を単なる知識として習得するのではなく、生活に目を向け、語彙の拡充を図ることが大切であると考えての実践。「和語・漢語・外来語を理解する段階」「生活に目を向け語彙を増やす段階」「表現活動に生かす段階」の三つの段階で学習を進めた。

○「語彙力を高めながら読み深める『走れメロス』文章中の語句に基づく小説デイベート授業」 滋賀県・堤慎一郎教諭の提案。
 今、大学生の語彙力(日本語力)が危ない!<文科省メディア教育開発センターによる調査結果(2004年)全国基礎学力調査研究プロジェクト (2004・2005年)>この危機感から「語彙」に焦点を当てた「小説ディベート」の実践。
 (1) 登場人物に関する読み取り課題(論題)について、自分の論拠となる記述(語句)を探しながら読む。
 (2) 個人で探し出した論拠をディベートチーム内で交流することで読み深め、相手チームとの論戦に勝つための説得力ある意見文を作る。
 (3) ディベートの形式で、双方が記述(語句)に基づく立論・反諭・最終弁論を展開し、審判者に自分のチームの読み取りの正当性を主張する。生徒達は語彙力を拡充し、語句を駆使して生き生きと学習を進めた。

○「実生活に根ざした敬語の指導」 青森県・須郷和歌子教諭の提案。
 「言葉の乱れ」が指摘される中で、「敬語を適切に使うことができない」という報告がしばしばなされている。今後の社会生活を考えたとき、「相手」や「場面」に応じて適切に尊敬表現や謙譲表現を用いながらコミュニケーションを図る力は必要である。従来の敬語指導では、尊敬・謙譲・丁寧の三つの敬語を正しく言い分けることを主なねらいとしてきた。この実践では「敬語が適切に使えるようになる」など、現象や数値で即座に評価できるような「ことばの力」にはあまり固執せず、生徒が「相手意識」「場面意識」という新しい視点を獲得することでことばを別の角度から認識し直し、言語感覚を豊かにすることをねらった。

 教科書に依存せず、学び手の実態を見据えての三実践であった。
(彦根市立河瀬小)