第33回国語研究集団合同研究会
椙田先生の提案に学ぶ
好 光 幹 雄

 椙田萬理子先生(奈良女子大学附属小学校・竹の会)のご提案は「読み高める力をどうつけるか〜自力で読める子どもに〜」(4年「白いぼうし」)であった。提案の魅力は、3点。

 1点目は、全体で交流を深める前に個々が徹底的に教材文と関わる独自学習(ひとり学習)の工夫。
 2点目は、独自学習を進めた上で、全体交流をし、更に独自学習では解決できなかったことを出し合ったり、友だちの考えを参考に読みを深めたりすること。
 3点目は、提案方法として、授業の一言一句まで掘り起こし、丹念に授業分析をしていること。子どもの変容や教師の関わり方がはっきりと分かり、今後の授業にどう生かすかを明確にしていることである。

 さて、1点目のひとり学習のねらいは、椙田先生が「今生きている自分の丸ごとの力で文章に向かい合っている子どもたち」を見て、「自分の中で、もう一人の自分と対話を交わしながら、作品と付き合う時間が必要である」と考えられている点にある。つまり、一人ひとりの気になることやこだわりの違いを大切にし、個々が作品と各々の方法で親しくなっていくことをねらわれた。
 そのための手だてとして、単に作品をノートに視写し、気づくことや感想を書くということだけではなく、タクシーの中の夏みかんになってひとり言を書いてみようとか、自分の思いをぼうしの中のちょうへ手紙文で話しかけよう等、具体的なアプローチの仕方を示し、子どもたちがより作品と親しくなれるように配慮をされている。

 他の作品でも例えば、「ごんぎつね」の葬列で踏み折られていく彼岸花になってひとり言を書いてみたり、松茸や栗になって兵十へ手紙文を書いてみたり等、立場を変えることによって視点が変わり、作品の中へより深くしかも自然に入っていけることがある。

 このようなひとり学習をした子どもが次のような感想を述べている。
「ひとり学習をして一番よかったことは、それは、『車道のすぐそばに落ちている白いぼうし』になったことです。時間が長くてたくさん書けました。それに 登場人物の気持ちを考えられるようになったからです。」
 このように、少なくとも自力で読むことができるようになったという自覚がされている。椙田先生がねらわれた自力で読める子どもへと成長している様子が見られるのである。
 大きな刺激を受けた夏であった。
(大津市立堅田小)