巻頭言
入門期の国語指導
小 川  豊

 一年生は可愛い。なんと言っても素直で、素朴である。でも、手が掛かる。同じことを何度も言わなければならない。口喧嘩や言い付けに来ることも多い。

 しかし、やっぱり、とても可愛い。純真で、教え甲斐もある。私は一年生が大好きで、一年担任を六回も経験した。一年生の子どもたちにとって入門期の指導は非常に重要であり、学習面に於いては基本の学習態度や学習方法を身に付け、さらに、やる気を持って自主的に学習が行えるように指導していかなければならない。ゆえに入門期の指導次第で子どもは変わると言っても過言ではないだろう。

 入学した子どもたちに、読む力、書く力、聞く力、話す力を付ける為にしてきたことを列挙すると、o発音、発声 o口の体操(あえいうえおあお…) o姿勢 o本の持ち方 o音読 o鉛筆の持ち方 oノートの使い方 o挨拶や返事 o挙手の仕方 o発言の仕方 oつけ加えやおたずねなどの話し合いの仕方 o読み聞かせ o読書等々。本格的な文字指導、作文指導、イメージ豊かに読みとる指導等を除いても、これくらいあるが、気を付けてきたことは、まず第一に継続的に行うことである。どれをとってみても一朝一夕にはいかず、気長に根気よく指導していかなければならない。次に、その子の良いところを見つけ、認め、大いに褒めることである。子どもは褒められると喜び、新たな意欲が湧いてくる。そして根底には自由にものが言える、明るく楽しい学級づくりがある。

 また、聞く力や話す力を育てる上では、本校の「朝の会」が大変役に立った。「朝の会」というのは子どもが植物や小動物、虫、自分で作った物などを持って来て、みんなの前で発表する。それを聞いていた他の子どもたちはおたずねや自分が経験したことのお話をし、少しずつ深めたり、発展させたりしていく。一学期だとタンポポやオタマジャクシ、ザリガニ、カタツムリ、カメ、キュウリ、トマトといった様々な物が持ち込まれ、教室は賑やかである。

 それから、書く力を育てる上でも実物(具体物)があると指導し易いので、皆さんも一度是非試していただきたい。

 入門期というのは一年生に限らず、六年間を通して見れば二年生も含まれるし、もし、子どもが育っていないと実感するのなら、どの学年でも入門期の指導が必要になってくる。

 地道にこつこつと指導していただきたいし、私達自身も常に一年生の心を持ち続けたいと思う。
(奈良育英小学校長)