「朝のスピーチ」でつける力
池 嵜 繁 伸

 朝のスピーチでの取り組みから、「話すこと・聞くこと」の学習で大切にしなければならないことについて考えてみたい。
 昨年度からの持ち上がりで、6年生を担任している。クラスの実態として「読むこと」「書くこと」に比べ、「話すこと・聞くこと」の力が十分発揮できていない印象を強くもった。国語科だけでなく、表現することへの抵抗や自信のなさが目立った。

 そこで、5年生では、朝のスピーチとして「3文スピーチ」に取り組んだ。その日の当番2人が、あらかじめ原稿を準備することなく、3つの文で「はじめ・中・終わり」を意識して、昨日のできごとなどについて話す。聞く側は、その話をもとに、質問や感想を述べるようにした。
 原稿を持たずに話すことに対する抵抗をなくし、その場で質問に適切に答えることを大切にした。また、聞き手の態度や意識を育てることにも力を注いだ。スピーチする側と聞く側の双方向のコミュニケーションに重点をおいた取り組みであった。
 簡単そうに思えた「3文スピーチ」ではあったが、クラス全員がスムーズに行えるようになるまで、かなりの期間を要した。
 その後、十分な手だてを工夫することができずスピーチの内容面で十分な深まりが見られなかった。

 5年生での取り組みをふまえて、6年生では「30秒間スピーチ」を行っている。スピーチ用のプリントを綴じたファイルを1冊用意し、前日に子どもに渡し、スピーチ原稿をそこに書かせている。
 ファイルの表紙裏に、原稿の例文を3つ提示しておいた。
 ・例文1…最近頑張っていること
 ・例文2…今、私が読んでいる本
 ・例文3…楽しみにしていること
 このことが、テーマの幅を広げ、スピーチの型を示すことにつながった。聞く側には5年生のときと同じように、質問や感想を述べるようにさせている。また、スピーチにかかった時間等も裏表紙に貼った一覧表に記録している。
 当然のことではあるが「3文スピーチ」に比べ、内容的に充実したものとなり、原稿として足跡が残るという面でも価値がある。

 しかし、「話す・聞く」力を育てるという面からはどうなのだろうか。
 原稿を見ずにスピーチできるようにさせたいという思いはあるが、原稿を読んでいるのが現状である。聞く側の子どもたちも、「3文スピーチ」と比べると、質問よりも感想を述べる子どもが多くなり、双方向のコミュニケーションが成立しにくい。
 やはり、一口に「話す・聞く」力を育てるといっても、スピーチで育てるべき力(独話力)と双方向のコミュニケーションで育つ力(対話力)等の系統性を十分意識した指導が重要であると改めて感じた。
(彦根市立平田小)