ふ た と ぶ た
蜂 屋 正 雄

 初めての1年生担任。
 複数加配の先生は「1年生は準備が大切。準備さえしっかりとできていたら、学習する内容は簡単なのだからすぐに乗ってきてくれる」と言われたが、こちらの発問と子どもたちの反応が一致するときと、ずれるときの差が大きく、引き締まる思いと共に、新鮮な楽しい毎日を過ごしている。
 ひらがなの学習も半ばをすぎた5月中旬、「ふたとぶた」(東書1年)を学習した。

 すずめと すずむし
 どうして なかよし
 どちらも すずが
 ひとつずつ

 板書した後に、みんなで教師の後について音読する。
「このお話、何かおかしくない?」と問いかけると、「おかしくないで〜」という大半の子どもの中に、 「おかしい」という反応の子が三分の一程度いた。
 そこで「教科書の26ページを開きましょう」と指示すると、「やっぱり〜」「あそうか」という子のなかに「これでいいのかな」と、不安そうな子もまだいる。「このお話のおもしろいところはどこですか」と聞くと、たくさんの子がいろいろな意見を言う。不安な子たちも、「すず」が重なっていることがわかり、安心した顔になってきた。

 内容がわかったところで、音読を繰り返す。数回したら飽きてしまうので、濁音を清音にして読んだり、全部を濁音にして読んだりした。子どもたちは「『びどづずづ』って、変な感じやなぁ」と楽しそうに音読していた。濁点がつくと内容や意味が変わるということを体感できた。

 翌日の授業では、クラス全員に濁音のつく言葉を発表させ、が行・ざ行・だ行・ば行に分けて板書していった。この時点で教師の意図に気づいた子は数人であった。
 全員の言葉が並んだところで、子どもたちがまだ出していない濁音(げ・で・ぢ・び)の入った言葉を示し「先生はある約束を決めて、みんなが出してくれた言葉を黒板に書きました。さて、この約束でいくと『でんでんむし』はどこに入るでしょう」と聞くと、子どもたちは「まだまだ言いたい」という表情から一変して、「どこに入るって…」という表情になった。グループを一つ一つ指し示し、「ここ?」と聞いて進めていくと。だんだん声が大きくなっていった。ほぼ全員声が出るようになったところで、言葉の中の濁音を丸で囲み、「がぎぐげご」「ざじずぜぞ」「だぢづでど」「ばびぶべぼ」と、声に出して読んでいった。
 みんなが集中して問題に挑み、解決していったんだ、と感じさせることのできた授業だった。
(草津市立笠縫東小)