巻頭言
発 話 分 析 の 勧 め
吉 田 和 実

 最近、ブリント学習がとても多くなっているように感じます。放課後、先生方がとても熱心に丸つけをしている姿は、職員室の姿としてはよいと思うのですが、一つの危惧を覚えます。
 私は、問答をしない教室が増えているような気がしてなりません。子どもたちとコミュニケーションを楽しむことをしないで、ただひたすら漢字や計算練習をさせていくことがよいのか疑問です。

 私は、ある時期、「発話分析」を試みたことがあります。単なる授業記録というものではなく、言いよどみから、語尾の細かいところまで全部記録するのです。繰り返し聞けるテープレコーダーを用意し、何度も聞き返しながらパソコンに記録していくという作業を繰返しました。自分の授業をコミュニケーションという観点から振り返るうえでとても有意義でした。

 まず、1時間の授業での発話数で気付くことがあります。私の場合、教師と児童の全ての発話を合わせた総数は、多くて200程度ということが分かりました。そのうち、教師の発話は、約3分の2程度、活発に展開できたと思う授業でも、せいぜい半分程度です。児童は、多くても100の発話を、30人〜40人の児童で分け合っているということになり、全員が等しく発言したとしても、1人3回程度ということになります。発言の回数を制限し、全員に発言の機会を与えるようにするのは当然のことといえるのです。

 教師の発話にも特徴があります。
 私の場合は、「ちょっと」という副詞が多く使われます、「ちょっと、そこ、みんなで読んでみようか」のような使い方です。これは、程度を表しているのではなく、軽い気持ちで取り組みましょうという意味です。子どもたちに学習へのハードルを低くしようという教師の意図がそんな言葉に表れているのだと思います。
 他にも、確認の「ね」の多用が挙げられます。「それでね、〜だったんだよね。」のように、一つ一つ確認しながら全員を次のステップに上げていこうという気持ちが表れています。他にも「はい」「じゃあ」など、授業中何気なく使っていることばが、子どもたちとのコミュニケーションにどのように影響しているのか考えてみることは有意義なことだと思います。

 教室でのコミュニケーションを豊かにするために、発話分析を試みたらどうでしょう。
(埼玉県入間郡大井町立大井小学校)