▼勢いよく「ハイ」と挙手し、指名してもらおうと先生を目で追っていた。ところが指名してもらえないので、今度は立ち上がって挙手をした。それでも先生の目に止まらないので、椅子の上に乗って「ハイ・ハイ」と威勢のいい声を出した。「そんな格好をしないで、座って手を挙げなさい」と指示をされて指示通りにした。随分利口な態度で挙手をした。しかし、指名はしてもらえなかった。「なんや、当ててくれへんのか」と一言。きっと、先生の言う通りしたら、当ててもらえる思ったのだろう。その子は、その後も絶えず、先生の気を引くようにいろいろな態度で授業に参加していた。この授業のことを振り返るとき、どんな言葉で自分をあらわすのだろうか。

▼先の事例は教育実習生の授業。次の事例は、ベテランの先生。発問、挙手、指名の形は同じであるが「たくさん手が挙がったね。五人の人に発表をしてもらうよ。まだ、発言をしていない人にまず、発表をしてもらおう。」その後、次はよく似た考えの人から一人、違う考えの人から一人だよ。」さらに、当たらなかった人は「ノートに考えを書く時間をあげるから、何を書くか考えておきましょう。」という指示で授業が進んだ。競争のように挙手はしないが、本当に意見が言いたいという雰囲気があった。

▼指名一つにも技があるように思えた。(吉永幸司)