巻頭言
座  禅  草
中 川 い さ を

初風に向かひて男の素顔濃し

毬となりぬはがねともなり恋の猫

小面に女の匂い桃の花

蝉の羽化いま喝采の陽を上げて

スーパーで握り飯買う敗戦忌

敗戦や零戦ただの鉄と化す

限りなき前進炎暑また炎暑

句碑誕生烈火の如き椿の緋

大愚とは大悟に似たり座禅草

風も雲も真白き近江水の秋

(俳誌『花藻』主宰)