巻頭言
知的好奇心を育むこたえ方
富 村  誠

 なぜ?と素朴な疑問を抱き、予想を立ててから調べてみる。その疑問が解けたときの喜び。また、面白そう!と興味・関心や意欲を湧かせ、挑戦してみる。その意図が実現したときの充実感。
 ?や!といった、知的好奇心を生かした生活、特に、学校教育での学習生活の重要性については、近時の教育改革において主張されているところである。

 私は、昭和53年からの17年間を小学校教諭として務めた後、教育の道を志す学生たちとともに歩み始めて10年目の者である。この度、吉永幸司先生からのご縁をいただいた。本稿では、「知的好奇心を育むこたえ方」について問題提起を試みてみたい。

 例えば、雛鳥を巣に抱えた親鳥を見て「なぜ動かないの?」と好奇心を湧かす。子ども(幼児)の疑問は尽きない。この疑問にどのようにこたえることが、知的好奇心を育むことになるのだろう。次の3つのこたえをもとに考えたい。
 @答える(Answer) 問題を解いて結果を示す。解答する。
 A応える(Respond) 働きかけに対して何らかの反応を示す。
 B堪える(Endure) じっとこらえて待つ。我慢し通す。

 「こたえる@」は、解答しようとする「答える」。「親鳥は、巣の中の雛鳥を守ろうとしたから」といった答えである。親や教師からの答えを受け入れ、うなずく子どもの姿が予想できる。
 「こたえるA」は、子どもに同感したり賞賛したりという反応を示すだけに留める「応える」。「ど うしてだろうね。○○くんは、どう思うの?分かったら教えて欲しいな」といった応えである。その際、「よし、調べてみよう!」と意欲を高める子どもの姿が予想できる。一方、「えっ?大人なのに、駄目だなぁ」と言う子どもの姿も当然のことながら予想できる。
 「こたえるB」は、そう言われた時に「本当は知っています!」なんてキレないで、「大人だって 分からないことってあるよ。私も調べてみようと思っているのだけれど、○○くん、どうする?」と、子どもの動きを待とうとする「堪える」である。

 この10年、学生たちの考えの大半は@に集中し、Aが若干、Bは皆無に等しい状況である。私は、 ABのこたえが、知的好奇心を育むと考えている。読者の方々もお考えくだされば幸いである。
(京都女子大学短期大学部教授)