力をぬいてたっぷりと
廣 瀬 久 忠

「大声を出そうとすると力んでのどが痛くなりますね。そうならないようにおなかを使って発声します。おなかで息をするのです。」
 子どもたちは、胸で息をするものだとばかり思っていたから、ざわめきが起こる。
「ふだんおなかで息をするときがあります。それはね、寝ているときです。楽な状態だと自然とおなかで息をします。鼻から吸って口から出す。さあ、おなかで深呼吸。鼻から吸って、口から出す。おなかを触って、吸って吐いて、吸って吐いて。」
「さあ、息を吐くときにそれを音にしてみよう。」
『ムァーアーアーアーアーアッ』
「力を入れず吐きながら『ムァーアーアーアーアーアッ』 だんだん声を一番向こうの人に届ける目標を持って…。」
「大事なことは力まないこと。リラックスすること。おなかから声を出すこと。」

 石部町文化ホールでの今年の演劇鑑賞会は、劇団民話芸術座による「雨ふり小僧」(原作手塚治虫脚色・演出小村哲生)。毎年12月の初めに全校の子どもが一堂に会して演劇鑑賞会が行われてきたが今年は、新たな取り組みとして演劇教室が行われた。多数の希望者から抽選で選ばれた4人の子どもと先生1人は、かねて集まって練習の上、当日を迎えた。

 ステージに上がり、役者の基礎訓練と朗読劇を体験した。
 プロの役者さんのリードで子どもたちが緊張した面持ちから次第に心を解きほぐしていく。プロの声と子どもの声の違いを観客である大勢の子どもたちは、実感としてつかんでいく。子どもたちの声もどんどん変わっていく。
 基礎訓練では、まず身体と心をリラックスする準備体操から始められた。身体をグニャグニャにする体操は、頭の重さを感じたり、操り人形になったり、身体をばらばらに動かしたりと脱力の仕方を体験的に理解する。
 「イメージを作りながら動かすと集中でき、リラックスできる」の解説に「イメージ」の大切さを子どもたちは学んだ。
 身体と心を「リラックス」させた上で、余分な力みのない状態で冒頭の呼吸法の指導である。

 子どもは「大きな声を出すには、顔が真っ赤になるぐらい力を入れ、喉に痛みを感じるくらいの気持ちで…」と考えているが、実際は、「余分な力を入れず、腹式呼吸で、たっぷりと息を吸い込み、おなかの底から相手を意識して、伝わる声を出すのだ」ということが、分かってくる。
「ゆっくり、はっきり、あわてない。口をしっかり開け、気持ちをたっぷりと。」
 台詞の表現の仕方にも「余裕」を持つことが分かる。

 最後に観客の心構えを話された。
「観るみなさんの気持ちが、役者に伝わるのです。」やはり聞き手の聞き方が大切である。
(石部町立石部南小)