▼7人の子が机を向かい合わせ説明文を読み合っていた。先生の質問に勢いよく手を挙げる子もいたし、挙手をためらっている子もいた。どの教室にも見られる日常的な学習風景である。

▼しかし、しばらく授業を参観している間に、これまでの先生のきめ細かな配慮のようなものが見えてきた。何度も音読の指名を受けて学習範囲を読む子もいたし、発言の仕方を指導される子と、発言の内容を指導される子とを意図的に考えておられるような場面があった。

▼授業後、「前の時間の観察で、音読が十分でなかったので、この授業で力をつけてほしいと考えたから」「内容に興味を持っていたことが前の時間の学習感想に書いていたから」「発表の仕方が充分でないと判断したから」と「前の時間」というのが繰り返しでたきた。

▼少人数指導や習熟度別指導等、新しい指導形態で「確かな学力」の定着を目指した工夫が求められている。30人、40人の指導に慣れていた時は、少人数はきめ細かな指導ができると考えていた。しかし、「きめ細かな」という概念が各人様々で、授業形態も指導方法もそれほど変化がないような印象を受ける授業もある。

▼先の授業は「前の時間」の実態をしっかり把握して「本時」で育てたい学習力を見定めている。

▼「前の時間」はキーワードにならないだろうか。(吉永幸司)