特別寄稿
野 口 先 生 と 押 し 花 の 話
嶋 田 雄 一
野口芳宏先生は、私が尊敬する教師の一人です。私が住んでいる宮崎にも、時々来てくださいます。 今回は、野口先生と押し花の話を書こうと思います。 野口先生が8月にモラロジーの講師としてこられた時、次の話を伺いました。 「昨日、ホテルの部屋に着いたら、ベッドの上に押し花と『私がこの部屋を清掃いたしました。どうぞごゆっくり旅の疲れを癒してください。A』という手紙がありました。それで今朝『A様大変ゆっくり休ませていただきました。ありがとうございました』と書いた手紙をフロントに持っていきました。フロントの方は喜んでくださって、『担当のAに渡しておきます』と答えました。ホテルで朝食を摂っていると、そのAさんが来られて『ありがとうございました』と言われるので『こちらこそありがとうございました』と言いました。」 私は、この話を伺って大変心を打たれました。普通なら何気なく見過ごすことに心を配り、思いを相手に返すこと。これが本当の「伝え合う力」だと思ったのです。 この話には、続きがあります。 私と一緒に押し花の話を聞いたサークルのS氏。そのS氏がホテル神田橋を利用する機会があったそうです。宿泊した部屋が、なんと野口先生と交流があったAさんの清掃した部屋だったのです。 S氏は、この機会にとAさんを訪ねたそうです。 「野口先生と手紙のやりとりがあったという話を伺ったのですが。」 S氏の問いに、Aさんはこう言ったそうです。 「あの手紙は宝物です。今でも従業員室の壁に貼って毎日眺めています。」 野口先生の言葉は、Aさんに伝わっただけでなく、Aさんの心に残る「宝」となったのです。 何かをしてもらったら、言葉でお礼の気持ちを返す。伝え合う力とは、このようなところから出発すべきなのではないだろうか。 野口先生の話を伺って、そのことが強く心に残りました。 (宮崎県児湯郡高鍋町立高鍋東小学校)
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