カ ッ タ ー 訓 練 に 思 う
中 嶋 芳 弘

 8月28日から2泊3日、若狭少年自然の家での6年生の自然体験教室を引率した。その日程の一つに「カッター訓練」があった。
 カッターとは、オールをもって漕ぐ小型艇の一種である。普通のローイングボート(一般的な貸しボート)より大きく、人も多く乗れ、十分な復元性と浮力・強度がある。主として船舶に搭載され避難、錨作業、物品の運搬などに用いられた。現在では、実用面での役割を終え、訓練用として多く利用されている。


「カッター訓練は、もともと船員を目指す人達の基本的な実習だった。船は船底一枚を挟んで死と隣り合わせである。危険を避けるための注意力と判断力、なによりも協調性が必用である。オールを一人が力まかせに漕いでも、うまく進まない。一人一人の力が弱くても、全員のオールが揃っていれば、カッターは海面を滑るように進む。今日は、そのほんのさわりのところをみなさんに体験してもらう。私の話をしっかり聞いてオールを動かせれば、楽しい時間になる。」

 艇長の厳しいが優しさのこもった説明で「カッター訓練」が始まった。基本的なオールでのこぎ方。カイ用意・カイ立て・カイ備え・カイ組め・カイ納めなどの共通の動き。訓練が進んでいく。
 爽やかな光と風のなか、額に汗うかべ友と二人で1本のオールを握りしめ、力の限り漕ぐ子どもたち。
「いち」「ソーレ」
「いち」「ソーレ」
 全員が力を合わせて漕ぐと、カッターはすべるように進んでいく。ところが、一人でも歩調が合わないと容易に進んでくれない。つまり、一糸乱れぬチームワークが要求される。疲れたからといって、手を休めるものがいれば全体に迷惑がかかる。時には多少のつらさを乗り切る力も必要となる。そのつらさを全員で乗り越えたあとの充実感は格別である。
 集中がとぎれたり、力を緩めたりする子には、すかさず、
「○番、○○」
「△番、△△」
的確な艇長の声がかかる。

 広がる青い海
 汗にまみれた子どもたちの顔
 カッターが波を切ると
 腕の疲れを忘れ
 笑顔になる

 教えるべきことをしっかり教え、気付かせるべきことは、体験を通して体で気付かせていく。声掛けの必要な子にはすぐに適切な指示をし、実行を見届ける。艇長の指導に学びたい。
(彦根市立旭森小)