巻頭言
相 手 に わ か っ て も ら う に は
稲 澤 直 美

 吉永先生からお電話を頂戴したものの、私のようなものが投稿してもいいのだろうかと今も思い悩んでいます。しかし、悩んでいても解決しないので、私が最近出会ったことをお話しします。
 最近、私は、いくつかの会議に出席し説明を受けましたが、それらは、本当に分かりやすい説明だったとは言えなかったのです。

 例を挙げながらお話しします。「リュウボク保障」「コウテンジは活動が限られる」「サンリュウベイは必要です」何のことか、お分かりになるでしょうか。これを聞いたとき、私は、「どうして川に流れている木に対して保障をせねばならないのか」「好天だったら山登りもできるし、外でスポーツもできるし活動が限られるというのは、おかしいな」「サンリュウベイとは、どんな塀なのか」と疑問をもったのです。何のことか分からないので、隣に座っておられる方に聞いてみると、
「リュウボク保障をしてもらわないと、困りますよ。」
「リュウボクとは何ですか。」
「リュウボク言うたら、リュウボクや。」
 この方は、何のことか解っておられるようですが、私に分かるように説明をしてもらえませんでした。別の機会に恥をしのんで聞いてみて、やっと分かりました。リュウボクとは生えている木。つまり、立ってる木のことで立(リュウ)木(ボク)保障。コウテンジとは、荒天時のこと。サンリュウベイとは、三立米(三立方メートル)のことだったのです。

 この例からも分かるように、説明している人は、自分達が普段使っている言葉を、聞いている者すべてが理解しているものと思い込んでいるのではないでしょうか。自分達の職場(世界)だけで通じる言葉を使っていながら、「そんなことも知らないの」と聞こえるような言い方をされるとあまりいい気持ちがしません。
 しかし、中には私が尋ねると、「この人は、これくらいの知識があるな」ということを瞬時に見抜いて、分かるように話してくださる方もあり、その話は本当によく分かるのです。そして、どうしても、私には理解できそうもない言葉を使わなければならないときは、まず、その言葉を使い、その後で噛み砕いて「こういうことなのです」と説明を続けられるのです。

 仕事柄、人に説明することが多い私が、「知っていること」「分かっていること」を人に説明するときの心構えを学んだ場面でありました。
(京都府立丹波養護学校)