子 ど も が 鍛 え 合 い 育 つ
森  邦 博

 本校4年生の研究授業から…。
 その授業は、「話すこと・聞くこと」に焦点をおいたものだった。

(1) ペアの班を作り、「クラスを自慢で紹介するのに何をするとよいか」についての話し合いを、他の班のメンバーが取材する。(クラスは7班が3ペアと全体進行係に分かれて活動。全体進行係は計時と全体の様子の取材メモ作り。)

(2) 話し合いが終わったら、ペア班同士向かい合って相手の班の「誰のどんなところがよかったか」を発表し、交流する。

(3) 次に、全体進行係がそれぞれの班のよさやがんばりを発表する。

(4) 本時の学習の自己評価をする。

 授業の後、担任の先生からこんな話を聞くことができた。
 N児はいわゆる「よくできる子」を自認している子。本時では班の話し合いを取材する立場で活動していた。発表の時には、相手の班の一人一人について詳しいメモを取り、よかったところやがんばりを見つけて発表した。発表の最後には「少し惜しかったところは…、次からはここに気をつけたらもっとよくなる…」と、先生顔負けの内容までつけ加えた。4年生にしてはすごいがんばりである。
「この子は実は昨日の授業で大泣きしたのですよ」と、担任の話は始まった。
「昨日は話し合いを取材される立場で活動し、当然話し合いをリードしていた。ところがペアの班のだれからも認めてもらえなかった。これが涙の原因でした。当然自分が一番に認められるのにという思いがあったのでしょう。けれども取材する班の子からすれば、それはN児には当然のこと、今日特に頑張ったのではない、それで言わなかったとのこと。N児を慰めながら担任の先生は少しずつでも進歩したらいいのだと励ました」ということだった。
「今までより少し進歩した自分をめざすことをみんなから要求さされていると感じたのでしょうか。今日のN児は今までにない真剣さがんばりでした」と担任の先生。

 N児の本時での発表は、彼が本時、自分に厳しい目標を課した結果だったのである。持てる力一杯でしっかり取材し、一人一人についてきちんとメモしなければという思い。それががんばりの原動力になった。その結果が今までにない素晴らしい聞き手としての発表につながった、と私は考えたい。
 そして、互いに評価し合う授業は工夫次第で、子どもに自ら学び自ら変容しようとする意欲を育てるのではないかと思えたのであった。
 厳しさも子どもを育てる。
(大津市立仰木の里東小)