下 駄 を 預 け る
北 島 雅 晴

 下駄を預ける。国語辞典で調べると「相手にことの処理をすべてまかせる」とある。子どもに下駄を預けると言えば、子どもを信頼していることではあるが、悪く言えば指導を放棄していることにもつながる。でも、この頃、このことばが好きになってきた。

 2年生の学習では、まず教材文をすらすらと読ませるようにしたいと考える。(本単元は「名前をみてちょうだい」東書)どうやったらすらすらと音読するようになるかを考えるのではなく、それ自体を子どもにまかせてしまうことにした。
「まず、すらすらと読むようにしたいのだけど、どんな学習のしかたをしたらいいでしょうか?」 と問う。
「何度も読む。」
「2人のペアを作り、1文ずつ読んでいく。」
「班で順番に読んでいく。」
「間違ったらもう一度読み直す。」
 今までの学習経験を思い出し、このような意見が出た。(役割を決めて読むこともできると付け加え ておいた。)
 それから、「何回読んだらすらすらと読めるようになるか」「どの方法を組み合わせて練習をする のか」を問い、さっそく練習を始めた。
 まず1人で読む。   2回
 ペアで1文ずつ読む。 2回
 班で役割を決めて読む。2回
といったような簡単な見通しをもって音読練習をする。

 しばらく練習をつづけているとある女の子が、
「音読の発表会をしたい。」と、言い出した。
「どうして、音読の発表会をしたいの?」
「読んでいるとおもしろいし、読む自信があるから。」
「発表会をするとしたら、どの役をやりたい?」
「それは、まだ決めていない。」
 この女の子の発言は、教師が意図したものではなかったが、「これは使える」と思い、みんなにたずねてみた。あっさりOKが出たので、音読発表会をすることになった。次は発表会までにどんな準備が必要かを考えることになる。

 本単元では、登場人物のおもいが伝わってくることばをさがすことをねらいとしていたが、「○○の気持ちが伝わるように音読しよう」というめあてをもって学習を進めることになった。
 子どもにまかせてしまう部分を作ると、子どもが自然に動き出すことがある。教師も肩の力をぬい て指導できるのもよい。
(草津市立草津第二小)