巻頭言
穏 や か な 口 調 と 笑 顔 で
西 澤  清

 人生は出会いである。よき出会いは人生を豊かなものにする。
 「さざなみ国語教室」の代表でおられる吉永幸司先生とはよき出会いをした。いや、させていただいた。
 昨夏、全国大会を一年後に控え、滋賀県に西村佐一会長とともに打ち合わせのために伺った。

 それ以前に現任校の三代前の校長である目賀田八郎先生から度々お手紙や資料をいただいてきた。その中に吉永幸司先生の校長としての授業実践記録があった。人間的にも教育者としてもなかなかの人物であるという目賀田八郎先生の高い評価にも注目していた。毎年、吉永幸司先生から送られてくるその実践記録には気取りも飾りもない。ただ、子どもを思う教育者としての姿勢が貫かれていた。
 そのような予備知識で出会った吉永幸司先生は私の思い描いていた通りの方であった。穏やかな口調とにこやかな笑顔。教育者としての重要な要素を兼ね備えておられた。

 私は子どもと挨拶を交わすとき、穏やかな口調と笑顔を心掛けている。このことは人と出会い挨拶を交わすときの根幹であると思っている。
 新卒間もない頃、国語科研究に誘ってくださった先輩からそのことを誉めてもらったことに端を発している。その先輩は事ある事に如何なる授業も子ども一人一人の立場を見失っては何にもならない、根本は子どもとの人間関係作りである、と教えてくださった。

 一方で研究を進めていくに連れて言葉のもつ厳しさを幾度となく指摘してくださった先輩でもあった。国語科を研究する以上は言葉に厳密であれ、如何なる妥協もあってはならない。
 今私が全国の国語科を研究されている或いは目指している方々とよき出会いを続け、豊かな人生を歩ませていただいているのもこれらのお陰である。

 さて、「さざなみ国語教室」に寄稿する機会をいただき、改めて読み返してみた。人としての姿勢や言語の教育としての国語科の実践例等、内容が豊富である。明日からすぐに実践に取り入れられるものばかりである。このサークルの先生方は幸せだとつくづく思う。
 私のささやかな国語教育研究サークルの仲間にも「さざなみ国語教室」を紹介しようと思う。同時に私共の研究機関紙も見ていただけるよう仲間に働きかけたい。
(杉並区立高井戸小学校長・全小国研副会長)