井 阪 先 生 の 提 案 に 学 ぶ
伊 庭 郁 夫

 奈良・かつらぎ会のみなさんとの初めての合同研究会。「かつらぎ会」からのご提案は井阪恵子先生。6月号の「巻頭言」では、子ども達との出会いの素晴らしさと運命について言及されている。

 提案のテーマは、「伝え合うことを通して語彙を豊かに身につけるための学習活動」。教材は「冬カルタを作ろう」という自主教材で、2年生での実践である。
 子ども達は、取材のために教室を飛び出し、中庭や運動場などで「冬」探しをする。自分が発見した「冬」をお互いがブレーンストーミングで自由に伝え合う。
 次に、書き込みをしたワークシートをもとに、カルタの読み札の言葉を考え合うのである。お互いがアドバイスしあったことを生かして読み札の言葉を決定する。
 生活科や図工科の時間を利用してカルタを作り、できあがったカルタで遊ぶという流れである。

 この提案で心をひかれたことが3点ある。
<その1> カルタ作りの発想の楽しさ。私は、1年間の最後に親子でカルタとり大会をしたことがある。手作りカルタには、子ども達の思いが凝縮されている。親も一年間の子どもの足跡を楽しく振り返ることができる。私が、社会教育に関わっていたときは、「まちづくりカルタ」や「郷土の先人カルタ」「人権カルタ」など楽しみながら活動に取り組んだことがある。カルタは、無駄な言葉がなく、リズムもよいので言葉の学習として効果的だ。

<その2> 常に「伝え合う」という観点を意識されている。「冬は風が冷たいです」という発言から、「風はヒューヒュー鳴っていました」「私には、ビュンビュンに聞こえました」のように擬音語に視点を向ける。また、「夏は、あまり吹かないのになあ」などの対比の発想も生まれている。ワークシートには、「取材したこと」を赤で、「伝え合ったこと」を青で書き込むという工夫がある。
 更に、読み札作成の段階では、「ぶるぶるさむそうパンジー」の『ぶるぶる』って言葉がすごくいいね」という発言がある。「順番を変えて『ぶるぶるパンジーさむそうだ』はどうかな」と順序やリズムに着目する姿がある。
 語彙の指導を頭で理解させるのでなく、子ども達が五感を使って楽しく主体的に学べる手だてが工夫されている。

<その3> 提案の内容も充実しているが、提案の方法も工夫されていた。カラープリンターを駆使し、見やすい資料であった。質問を前提に、緻密でわかりやすい提案の仕方が印象的であった。
(安曇川町立安曇小)