私の出会った子ども達 〜友達・人・自然〜
池 嵜 繁 伸

「長浜タウンウォークラリーや竹生島見学、びわ湖学習をしながら、友達をふやしたいと思います。勇気を出してどんどん声をかけていきたいと思っています。」

 滋賀県立びわ湖フローティングスクールに勤務することになった。開校式で代表の子どもが挨拶をする。新鮮な気持ちでこの挨拶に聞き入った。

「最近びわ湖がよごれてきていると聞いたりします。いつも何気なく見ているびわ湖ですが、船の中から日本一広いびわ湖をじっくり見ようと思います。」

 言葉のひとつひとつから、フローティングスクールに対する期待や不安、意気込みなどが伝わってくる。

 「5年生になったらフローティングスクールに行ける。」5年生になると子ども達は、この日を待ちこがれる。琵琶湖を湖岸から見るだけであった多くの子が、琵琶湖を舞台に学習活動を展開する。それが、代表の子の言葉を借りれば、「びわ湖をじっくり見よう」 であり 「友達をふやす」 ことである。子ども達は気づいていないが「友達」とは、同時乗船する友達だけでなく、琵琶湖も琵琶湖で生息する鳥や魚、木々等自然の全てを含んで考えこの重みを感じた。

 代表の緊張しながらも、語りかけるようなしっかりとした口調であった。きっと、この日のために学校や家庭で何度も練習してきたのであろうと思うと愛しく、また、まばゆくみえた。この子にとって、この体験は一生の宝物となるだろう。挨拶が終わったとき、大きな拍手がわいた。その中をほっとしたような表情で自席に戻った姿がさわやかであった。
 フローティングスクールという舞台は、一人一人の子が主役になって活躍をする場である。それは挨拶という場もあるし、食事係という場もある。互いに助け合い、協力していくことのよさを繰り返し繰り返し体験的に学んでいく。

 この日は、5年生の乗船に6年生が楽器演奏で花を添えてくれた。6年生はきっと昨年の乗船を思い出しているのだろう。演奏にも力がこもっていた。
 その6年生の中にフローティングスクールを経験していない子がいた。6年から転校してきたからである。6年で転校をしてきても体験航海という機会に乗船ができると知ってとてもうれしそうであった。
 滋賀県の子どもにとって琵琶湖は身近なものである。それだけに琵琶湖の恩恵を当たり前にしている。フローティングスクールの乗船も同様である。他府県からの転校生には、滋賀県に住む者以上に琵琶湖に驚きや憧れを感じていることをその子の表情から感じた。

 学級担任として引率をしていた時と違う楽しみがきっとある。開校式でしっかりと挨拶をした代表の子や滋賀へ転校してきた6年生の子との出会いがそれである。
 びわ湖の水面が朝日をうけてキラキラ輝くような、そんな子どもの姿を求めて、日々努力していきたい。
(滋賀県立びわ湖フローティングスクール)