「 い っ ぱ い 考 え ら れ た 」 を 積 み 上 げ る
岡 嶋 大 輔

手ぶくろを買いに」(東書3年)の学習後、感想を書かせたところ、「いっぱい考えられた」 「いっぱい発表できた」と書く子が多かった。
 子どもたちの「いっぱい」の中味が知りたく、学習ノートや授業記録を振り返った。

 この授業は、できるだけ文章の言葉を大切に読ませようと次のように指導した。
 (1) 「手ぶくろを買いに」を読み、感想を話し合う。
 (2) 美しい情景を表している文に立ち止まって読む。
 (3) 母ぎつねと子ぎつねの様子で、心に残ったことを話し合う。
 (4) 好きな場面を絵と文で書く。
 子どもが「いっぱい考えた」と言ったのは、(2)と(3)である。

 子どものノートには、次のような書き込みがある。
・昨夜のうちに雪がどっさりふったのです。その雪の上からお日様がきらきらとてらしていたので、雪はまぶしいほど反しゃしていたのです。雪を知らなかった子どものきつねは、目に何かつきささったと思ったのでした。
 ーー暗い所から明るい所に出ると急に目がいたくなる感じがよく出ている。
・するととつぜん、後ろで、ドタドタ、ザーッと、ものすごい音がして、パン粉のような粉雪がふわあっと子ぎつねにおっかぶさってきました。
 ーー本当に聞こえてきそうな音のことが書いてあり、雪のことも、目をつぶっても分かるように書いてある。

 「……感じが出ている」「分かるように書いてある」と結んでいる文が多かった。
 話し合いでは「上手に書いているところ」ということを中心に進めたので、子どもたちは、よく発表をした。  文から感じた自分の考えと、その考えのもとになった文を発表するのだから、発表しやすいし、友だちの意見とも比べやすかったからである。

 指導過程で指示したことは、次のことである。
 1 美しいな、きれいだなと思うところに線を引きましょう。
 2 心に残ったところ、好きなところを見つけよう。
 3 どんな登場人物の姿が見えてくるだろう。
 4 絵にしたらきれいだろうなという文を見つけよう。
など。この中で、子どもの心に響いたのは「4」である。「絵にしたら」というのが、分かりやすい 問いかけであったようだ。

 「美しい文がたくさん見つかりました」と感想を書いた子がいた。分かりやすい問いが「いっぱい考 えられた」を引き出すのだと思った。
(甲賀町立佐山小)