▼3年生の学習は秋の虫をつかまえることから始まった。コオロギやカマキリを教室で飼い世話をしていく過程で、虫のことを詳しく説明している文章を読む、観察をする、図鑑で調べるというように活動は多彩に広がった。

▼飼って世話をするという目的であったが、そのうちに好奇心が生まれ、何かに書いておきたい。記録に残したい、誰かに伝えたいというように心が動いていった。

▼教師の働きかけはそこから始まった。「今までのことで、とっておきの事を誰かに伝えるとしたら、誰に、何を伝えますか」という問いが生まれた。相手ははっきりしなかったが、目的ははっきりしていた。作文の題は「コオロギのえさのひみつ」「コオロギのつかまえ方」「カマキリのそだてかた」など。

▼子どもの作文。「学校のうら庭には、バッタがいます。バッタの色は大体みどりです。草の色を少しうすくしたくらいのみどりです。草の色とにているのでみつけにくです。足は、三角形を一本ぬいたような形です。足を数えたら六本ありました。そのうち後ろ足は、飛ぶためです。」 観察をした子でないと書けない部分が多く魅力がある。この子は1年生に知らせるという相手意識で書いた。

▼その子でなけれ書けないこと、表現できないことを大事にするという体験のありかたについて考えた事例であった。(吉永幸司)