巻頭言
掲 示 板 の イ メ ー ジ を 変 え る
武 西 良 和

 4月に附属小学校に赴任した。
 移動黒板を校長室の廊下前に置き、そこに自作の詩を貼り、それについて感じたことや思ったことを書いてもらうようにしたのだった。そのために、掲示板のそばに記入用紙を準備し、それに記入するようにしたのだった。もちろん鉛筆も準備した。
  教 室    武西良和
待っていた
きのうのままで
日記を見せ合い
計算を教え合った
ぬくもりが

廊下を通る今朝の冷たさに
ぬくもりはガラス戸の中で
凍えそうになっている

一晩中子どもたちを
待っていたので ぬくもりは
疲れ気味で痩せ細って もう
眠り込んでしまいそうだ

冷たさを破る
足音の柔らかさ
タンタンタンターンと
部屋のカギを手の内に
しっかり握って

カチンと錠の
開く音
ふわっと包む
きのうのぬくもり 子どもはそのぬくもりに
勇気づけられ
机の上にランドセルを置き
手袋をぬいだ そして
残っていた部屋中のぬくもりを
吸い寄せるようにして
両手に息をふあーっとかけた
ぶるるっと
武者ぶるいした部屋は
はっきりと 今
目覚めた
さまざまな感想が寄せられた。
◇やわらかい感じがしてとてもよいと思います。(6F H子)
◇副校長先生の詩は、とてもきもちがおちつきました。(6B M子)
◇意味不めい?(4B T男)
◇なんてかいているかわかりませんでした。(1A 無記名)

 私は、感想の入った袋を開ける時、わくわくどきどきする。
 それらの感想をもとにして、次の月の詩を考える。授業参観には、保護者の何人かは、その詩を読んでいた。
 掲示板というのは、概ね掲示だけに終わっていることが多い。その掲示を見て、感想をもつ人がいる。私は、この掲示板をコミュニケーションの生まれるものにしたいと思ったのだった。
(和歌山大学教育学部附属小学校副校長)