巻頭言
郷土の民話を生かした国語学習
西 澤 真 佐 雄

 わたしが住んでいる長野県には、各地域に、郷土特有の民話がいくつも残されている。
 以前勤務していた学校で、地域に残る民話を取り上げて、国語学習を試みたことがあった。
 毎日、朝の時間、自分たちの地域に関わる民話を読み聞かせているうちに、子どもたちは、家の人から学区内にあるぼさつさまにまつわる民話があることを発見した。

 それは、「火事を知らせたぼさつさま」という民話であったが、さっそくそこに見学に行き、その場で住職さんから、そのぼさつに関わるお話をお聞きし、ぼさつさまを拝見させていただくこととなった。
 子どもたちは、真っ黒こげのぼさつさまに大変感動し、見学の帰り道、このお話を何とか他のクラスの人たちにも伝えたいということになり、「紙芝居作り」をしようということになった。

 このような子どもたちの動きや願いをみて、身近な民話という素材を紙芝居などで他の人に知らせようとする活動により、子どもたちは、「喜びをもって自己表現する」姿に変容できるのではないかと考え、「民話を調べて発表しよう」の単元を進めることにした。
 この単元では、子どもたち自らが採取した郷土の民話を、様々な方法(紙芝居、劇、ペープサート、指人形、オペレッタなど)で自己表現し、他の人にわかるように発表する活動を通して表現の喜びを知るようにしたいと願って活動を仕組んだものである。
 この学習を通して、今まで作文は「めんどうくさい」という理由で大嫌いだったO・H児は、紙芝居の説明文を書く活動の中で、書くことの楽しさを知り、他の人にわかるように書こうと努力するようになった。また、オペレッタ作りの中でも、意外な力を発揮して、作詞を友だちと協力して、作り上げることができ、友達から、その良さが認められた。

 このように、学校のすぐ近くのお堂にまつられているぼさつさまにまつわる話を取り上げて学習したことによって、昔の人々の考え方、願い、生き方などを知ることができた。また、この学習から、地域の民話をもっと知りたいという学習に発展し、地域の民話マップを作って、全校の人たちにも活用してもらうことができた。地域の残る民話学習のおもしろさを子どもたちは実感できたようだった。
(長野市立城山小学校)