入 り 授 業 者 の 授 業 開 き
西 村 嘉 人

 わたしが5年生の子どもたちと出会ったのは、学級開きから遅れること1週間、4月17日のことである。学級開きのような心ときめく子どもたちとの出会いはできないが、授業第1回目は緊張するものである。
 この1時間で子どもたちの気持ちを少しでもこちらの方に向かせたい、そんな思いを持って教室に出かけた。
 先ず、子どもとの出会いで3つのことを指示した。
「これから座席順にまわって挨拶をしていきますから、
 ・大きな声で名前を言い
 ・続けて何か一言付け足し
 ・最後に力一杯先生の手を握るようにしてください。」
 子どもたちは、思わず拳を握りしめる。
「先生、本当に思いっきり握手していいの?」
笑いながらうなずき、子どもたちからの力一杯の握手を受け止めた。

 続いて、詩の学習である。
 静かに黒板の詩を見つめているように指示してから板書を始めた。取り上げた詩は、小森香子さんの「自分のことばで」である。写し終えた後、
「ぱっと目に飛び込んできたかっこいい言葉ってありますか?」
と尋ねると「自分の意志と責任」という反応が返ってきた。この後、音読を繰り返しながら気に入った言葉を発表し合う学習へと進んだ。たくさんの言葉が見つかってきたところで、詩の視写に移った。
 視写の後は、話し合いである。先の音読で見つけた言葉から感じたこと、考えたことを発表させた。
「自分の意志という言葉で、自分で考えて自分で決めるみたいな強い言い方がしているのでかっこいいと思った。」
「ぼくも同じ所なんだけど、自分という言葉がとても強くて、だれが決めるんでもなくて、自分が考えて決めることがとても大事なことがこの言葉で分かってきてとても気に入った。」
 子どもたちの発表はこの後どんどん続くのだが、聞いている子どもたちの表情がとてもよかった。

 学習の終わりに書かせた学習感想を一覧にして翌日子どもたちに配布した。そして、ひとりずつの感想にコメントを入れた。昨日積極的に発表していた子どもたちに、この感想についての思いを聞いてみた。
「こんなに聞いてもらっていたのが分かって驚いた。」
いい受け止め方である。
 始めの1時間。ちょっと気負い過ぎたかなとは思うけれど、気分は爽快であった。
(滋賀大学教育学部附属小)