笑 顔 と 集 中
伊 庭 郁 夫

 持ち上がりの6年生。4月10日。新たな気持ちで、29名の前に立つ。そして、黒板の真ん中に大きく「笑顔と集中」と書く。
 「笑顔」というのは「楽しく」ということ。同じ1年を送るなら楽しいのが一番だ。私自身も、笑顔や笑い声のイメージを大切に教室に向かいたい。子どもたち同士も、同じである。

 昨年、こんなことがあった。2人の言い合いが続き、「あっちが悪い」「あの時こうした」と言い出したらきりがない。表情も険しくなってくる。
 そこで、1階へ降り、洗口場の鏡の前に2人を連れていった。そして、自分の表情を見せてから、
「笑顔をつくってごらん。」
と言った。初めは、照れくさそうにしていた。私も混じり、3人で鏡を通してのにらめっこである。そうこうしている間に笑いがもれ、結局2人は何事もなかったかのように帰っていった。

 先日、学級掲示に使う写真を撮った。お互いに笑わせ合う。一人ひとりの笑顔をレンズごしに追う。
 しかし、冗談や嘲笑といった笑いは戒めたい。そこで、「よく遊びよく学べ」と言いたい。つまり、私が最も人間にとって大切だと考える「集中力」である。けじめである。
 特に、授業中は集中する。そして、時間には終わる。時間を延長しても集中力がもたず、効果が薄いからである。

 国語の授業は、「詩」そして、「加代の四季」と続く。ここで大切にしたのはテンポである。だらだらした授業にならないよう配慮した。
 「加代の四季」の授業時数は4時間。音読の指導。そして、全文視写をし言葉の意味を確かめ秘密さがしをする。最後にもう一度音読をする。
 「春」「かたぐるま」「夕立」「秋」「雪」と5場面である。私は、黒板いっぱいに子どもたちと同じように全文視写をする。早く書けた子どもは、挿し絵を描いたり秘密を探す。
「加代は幼稚園くらいじゃないかと思う。かたぐるまをしてもらって喜んでいる。」
「加代はおとなしく本を読む、とあるから小学生かもしれないな。」
「白もくれんの花が、まっすぐこっちを向いていると書いてある。それだけ高いところまで肩車をしてもらったんだと思う。」
 子どもたちが作品をイメージする姿も楽しい。
(安曇川町立安曇小)