デ ィ ベ ー ト へ の 思 い
伊 庭 郁 夫

 悔しい思いをした。
 県の国語部会で、授業研をしたときのことである。
 授業研の前日は、今までになく白熱したディベートの試合であった。試合後、審判をしている子どもから、「鋭い」と思わず声がでるほどであった。それも、ふだん積極的に発言することの少ない子どもたちの活躍であった。質問や答え方が、お互いにかみあっていた。
 そこで、安心してしまい、何とかなるだろうと思い当日を迎えた ところが、本時は立論を受けての質問が出てこない。1分間がこれほど長く感じられたことはなかった。

 この体験から、今後の取り組みの改善点が見えてきた。
(1) 時間の保障
 賛成側立論の後、すぐに反対側に「質問」を要求した。大人でも質問するためには、いくら集中していても時間がいる。作戦タイムを設定していくことが無理のないディベートとなる。
(2) 事前準備の確認
 質問や反論に関しては、相手側立論の想定が不十分であった。多様な状況を想定させ、自信を持って対応できるようにしたい。 ディベートは、その時間までの準備で決まるという鉄則を再確認した。
(3) メモをしっかりとる指導
 ディベーターのメモのとり方指導をするべきであった。審判側にディベートの展開をメモするよう指導しておきながら、肝心のディベーターのメモ指導がおろそかであった。音声言語は、瞬時に消え去る。
(4) 司会者の指導
 最終弁論と立論が、よく似た展開になりがちである。「最終弁論では質問はしない」「質問や反論を受けてまとめる」といった点に注意を向けさせ、軌道修正できる方向へ進めたい。
(5) 教師の具体的な助言
 痛切に感じたのは、子どもに話し方の具体例を示していくことである。そのために教師の聞く耳が鈍らないよう心したい。

 最後に、子どもたちの声から。
「相手の説得力がむねにひびいて負けるかもしれないと不安になりました。でも、がんばりました。」
「立ち上がって言おうと思ったんだけど、何も言えず時間がすぎてしまった。くやしかった。でも、やってみて、とっても楽しかったしよかったです。」
「ディベートをやっている間はよく聞き取れてよかったです。後から、相手のよいところなども分かってよかったです。」
(安曇川町立安曇小)