『 白 い ぼ う し 』(4年)
好 光 幹 雄

T 『ちいちゃんのかげおくり』をしってるかい。
C うん。3年生のときに習ったよ。
T そう。この『白いぼうし』も、実はあまんきみこさんの作品なんです。でも、これはちょっと愉快な不思議な物語です。飛びそうもないものが空を飛んだり、話をするはずのないものが話をしたり。ものすごく小さくなったり大きくなったり、普通の想像を超えたお話です。
C ファンタジーだ。
T はい。今日は、そのファンタジーを楽しみます。

 こうやって、『白いぼうし』の範読をした。読み終わって、登場人物や場面設定を確認してから、松井さんの人柄に話題が移った。優しそうな人、子ども思いの人、ちょっと太りぎみでいたずらっぽい人等。

T 実は、このお話はシリーズもので、『車のいろは空のいろ』という本の中に出てくるんです。誰か読んだことがありますか。
C はい。
T おもしろかったでしょ。その本持ってるの。
C はい。
T そう。じゃ、みんなに読んであげようか。

ということで、翌日から、松井さんシリーズを読み聞かせすることになった。
 『小さなお客さん』
 『うんのいい話』
 『すずかけ通り三丁目』
 『山ねこ、おことわり』
 『シャボン玉の森』
 『くましんし』
 『ほん日は雪天なり』
題名を言って、読んで欲しいものから次はどれにすると挙手をして読み進めた。

 読み進める中で、冒頭の第一場面が、話を進める上での重要な場面設定であることが分かってくる。松井さんが、どんな日のどんな時刻にどんな場面で、どんなお客を乗せるのか。あるいはどんな人と出会うのか。いくつか読み進めて『白いぼうし』にもどると、子どもたちは場面設定や情景描写に鋭く反応するようになっていた。
 ファンタジーに限らず物語を楽しむためには、その場面設定にすっと入っていけるかどうかが鍵である。
 今回『車のいろは空のいろ』を読んだことで、子どもたちはファンタジーの楽しみ方の一つを学んだのではないかと思う。時間を作って『続車のいろは空のいろ』もぜひとも読み聞かせをしたい。
 このように考えると、教科書教材の取り扱いはもっと自由で柔軟であっていいと思う。
(大津市立堅田小)